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つかこうへい流役者の愛し方

必ず「主役」になる瞬間、温情のダンディズム

長谷川康夫 演出家・脚本家

必ず「主役」の瞬間を作る

 つかこうへいの芝居の作る舞台に立つことが、役者たちにとって、なぜ「やめられない」ものだったか。それは観客に「ウケる」喜びを確実に体感することが出来たからだと、前回()書いた。

 しかし役者にとっての「演(や)りがい」は、それ以上に、与えられたどんな役であっても必ず、その舞台上の物語を進める中で、必要不可欠なパートを託されていたということに尽きる。

拡大つかこうへい=©斎藤一男

 簡単に言ってしまえば、当時のつかが作る芝居に「その他大勢」はいなかったのだ。どんなに台詞が少なかろうが、出番が限られていようが、裏切ることなく、その役者が主役となる瞬間を作ってくれるのが、つかこうへいだった。

 当時の紀伊国屋ホール(東京・新宿)であれば、420名ほどの定員に加え、二つの階段通路に1段2人ずつ、舞台前から最後尾までびっしり座る当日券の客。さらに両サイドの入り口脇に固まったり、座席最前列と舞台の隙間まで埋める数を合わせれば、650を超える観客全員の目が、間違いなく自分に注がれる時間を経験できるのである。

 「見られてナンボ」の役者にとって、これほど幸せなことはない。

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筆者

長谷川康夫

長谷川康夫(はせがわ・やすお) 演出家・脚本家

1953年生まれ。早稲田大学在学中、劇団「暫」でつかこうへいと出会い、『いつも心に太陽を』『広島に原爆を落とす日』などのつか作品に出演する。「劇団つかこうへい事務所」解散後は、劇作家、演出家として活動。92年以降は仕事の中心を映画に移し、『亡国のイージス』(2005年)で日本アカデミー賞優秀脚本賞。近作に『起終点駅 ターミナル』(15年、脚本)、『あの頃、君を追いかけた』(18年、監督)、『空母いぶき』(19年、脚本)などがある。つかの評伝『つかこうへい正伝1968-1982』(15年、新潮社)で講談社ノンフィクション賞、新田次郎文学賞、AICT演劇評論賞を受賞した。20年6月に文庫化。

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