メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

『イップ・マン 完結』、心震わすカンフー映画の傑作

藤崎康 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

人間ドラマとカンフー活劇の融合

 さて、『完結』における起承転結や人物配置は、シリーズ中でも出色だ。――妻ウィンシン(リン・ホン)を病で亡くしてから数年後(1964)、香港で静かに暮らすイップ/ドニー・イェンのもとへ、アメリカで活躍する弟子、ブルース・リー/チャン・クォックワンからサンフランシスコで開催される国際空手道大会への招待状が届く。が、癌を宣告され、余命いくばくもないことを知ったイップは、大会への出席を躊躇するも、反抗期の息子チン(ワン・シィ)の留学先を見つけるために、サンフランシスコに向かう。

© 2019 Mandarin Motion Pictures Limited All Rights Reserved拡大© 2019 Mandarin Motion Pictures Limited All Rights Reserved

 ところが、サンフランシスコの学校への華人の留学は、チャイナタウンにある中華総会の紹介状が必要だったが、移民3世で太極拳の達人である総会会長のワン(ウー・ユエ)や中国武術の師匠たちは、カンフーを西洋人に教えるという“掟破り”を行なっているブルース・リーを問題視しており、イップを冷たくあしらう。

 こうして、様々なしがらみが主人公の行く手をはばむ、というサブストーリーが丁寧に描かれるゆえ、ヤマ場のカンフー場面の熱量はいっそう高まるのだ。つまり、ともすれば活劇場面だけが焦点化されがちなカンフー映画にあって、『完結』では人間ドラマと活劇が見事に融合しているわけだ。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

藤崎康

藤崎康(ふじさき・こう) 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

東京都生まれ。映画評論家、文芸評論家。1983年、慶応義塾大学フランス文学科大学院博士課程修了。著書に『戦争の映画史――恐怖と快楽のフィルム学』(朝日選書)など。現在『クロード・シャブロル論』(仮題)を準備中。熱狂的なスロージョガ―、かつ草テニスプレーヤー。わが人生のべスト3(順不同)は邦画が、山中貞雄『丹下左膳余話 百万両の壺』、江崎実生『逢いたくて逢いたくて』、黒沢清『叫』、洋画がジョン・フォード『長い灰色の線』、クロード・シャブロル『野獣死すべし』、シルベスター・スタローン『ランボー 最後の戦場』(いずれも順不同)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

藤崎康の記事

もっと見る