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『ポリー氏の人生』(H.G.ウェルズ)に見る英国の階級社会の息苦しさ

乗り越えられない階級の壁への抗議がこめられたコミック・ノベル

三浦俊章 朝日新聞編集委員

 現代という時代をどう読み解くか。このコラムでは、書物の世界にヒントを求め、現代史の流れを読み解く補助線を探していく。ノンフィクションだけでなく、古典や小説などジャンルを問わない。今回は、SFの巨匠H.G.ウェルズの自伝的小説『ポリー氏の人生』を取り上げる。現在も続くイギリス階級社会への怒りをこめたコミック・ノベルである。

拡大H.G.ウェルズの『ポリー氏の人生』(高儀進訳、白水社)
 『タイムマシン』『透明人間』『宇宙戦争』という書名を聞けば、イギリスの作家H.G.ウェルズ(1866~1946年)の名が浮かぶ。いずれもSFの先駆となった古典的作品だ。だが、ウェルズがこうした一連の作品を書いたのは主に19世紀末、作家としては若い時期である。ウェルズはSFの世界だけでは満足できず、一般の小説や歴史書(『世界史概観』など)も手がけた。さらには政治活動にも邁進。時代に先駆けて国際連盟や世界人権宣言のアイデアを打ち出すなど、万能の人だった。

 そのウェルズの小説で今日評価が高い作品が、自身の出自である下層中流階級をコミカルな筆で描いた『ポリー氏の人生』(高儀進訳、白水社)である。日本では英文学関係者以外あまり知られていなかったが、今年1月に初めての邦訳が出た。人種問題がアメリカ社会の病理とすれば、イギリスの社会問題の根にあるのは階級である。『ポリー氏の人生』が刊行されたのが1910年。1世紀を経て、階級社会イギリスは変わったのだろうか。

 ウェルズの小説の世界を探索してみよう。

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