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【公演評】花組『はいからさんが通る』

いよいよ宝塚大劇場が再開、柚香光トップお披露目公演で華やかな舞台の復活を飾る

さかせがわ猫丸 フリーライター


 花組ミュージカル浪漫『はいからさんが通る』が、7月17日、宝塚大劇場で初日を迎えました。花組新トップスター柚香光さんの大劇場お披露目となるこの公演は、本来3月13日に初日を迎える予定でしたが、新型コロナの影響で、公演の休止が余儀なくされて4か月。出演者・関係者、そしてお客様…どれほど多くの人々が、この日を万感の思いで迎えたことでしょう。

 1970年代に連載された『はいからさんが通る』は、アニメ・ドラマ・映画化もされた漫画史に残る名作です。2017年10月には柚香さん自身が主演し、シアター・ドラマシティと日本青年館で上演、大好評を博しました。待望の再演となる今回は、ブラッシュアップして本拠地に凱旋です。

 男役としても成長を重ね、深みを増した柚香少尉が、トップスターとなって広い大劇場へと帰ってきました。(以下、ネタバレがあります)

少女漫画から抜け出た柚香

拡大『はいからさんが通る』公演から、伊集院忍役の柚香光=岸隆子 撮影

 開演アナウンスは高翔みず希組長から。130日ぶりの公演再開であることと、コロナ対策への協力を呼び掛けます。そして柚香さんのトップ第一声「皆さまとお会いできることを心待ちにしておりました」に、思わずグッときてしまう。お客様の数は定員の半分でも、拍手にこめられた想いはいつも以上に熱く、劇場全体をあたたかく包み込んでいました。

 ――時は大正7年。陸軍少尉・伊集院忍(柚香)は許嫁に会いに行く途中、自転車で盛大に転倒する“はいからさん”花村紅緒(華優希)と出会う。笑いが止まらない忍に怒った紅緒はいきなり平手打ちをお見舞いするが、実はこの2人こそ、祖父母の代に決められた許婚同士だった。だが、親に決められた結婚なんてと紅緒は猛反発し、自分を好いてくれる藤枝蘭丸(聖乃あすか)と駆け落ちしてしまう。

 小さな顔に長い脚、独特な顔立ちの柚香さんは、そのまま少女漫画から抜け出たように美しく、宝塚の男役になるべくして生まれてきたのかもしれません。伊集院忍はそんな柚香さんに、心憎いほどハマっていました。

 ドイツ貴族の血をひく忍は、眉目秀麗なだけでなく、つむじ風のような紅緒をいつも優しく見つめ、大きな愛で包み込む包容力がたまらない。柚香さんの演技にも余裕を感じ、トップとしての包容力が重なるよう。2019年のプレお披露目公演『花より男子』では“俺様”なピュアボーイ道明寺司を演じて、客席をキュンキュンさせましたが、今回は紳士の魅力で婦女子のハートを打ち抜きます。紅緒に迫る柚香さんの美しい横顔にドキドキしながら「これが宝塚なのよ」と、皆さんも久々にハンカチを握り締めるのではないでしょうか。

おてんば娘に全力投球の華

拡大『はいからさんが通る』公演から、伊集院忍役の柚香光(左)と花村紅緒役の華優希=岸隆子 撮影

 忍と紅緒の許婚話は、公家である忍の祖母と、旗本だった紅緒の祖父が御一新で引き裂かれ、「いつか身分など関係ない世の中になれば、ふたつの家を一つにしよう」と誓ったのが発端でした。スマートに受け入れる忍と、激しく抵抗する紅緒のコントラストが面白く、恋する気持ちが行きつ戻りつする展開は、少女漫画の王道そのものです。

 前回に続き、花村紅緒を演じるのはトップ娘役の華優希さん。ひたすらまっすぐで全力投球な紅緒を、ますますパワーアップさせて演じています。2018年の大劇場公演『ポーの一族』では、フランス人形のような可愛らしさが印象的でしたが、今回はお酒を飲むとやっかいだけどキュートなおてんば娘。ふり幅の大きい役を、どちらも納得の演技力で魅せてくれました。

 娘役らしい品のある雰囲気を壊すことなく、元気いっぱい演じる紅緒は、間違いなく華さんの代表作となったことでしょう。

 紅緒の幼なじみ・蘭丸は、前回に続き聖乃さんが演じます。歌舞伎の女形役者らしく、なよなよしていているのですが、いつも一生懸命なのがいじらしい。紅緒のことを心から愛していて、男らしい一面も見せてくれます。

 紅緒の同級生で華族の令嬢・環には音くり寿さん。進歩的な考えを持つ環をりりしく演じています。紅緒とも意気投合していますが、幼なじみの忍に淡い恋心を抱いていたため、蘭丸と協定を結び、ある作戦を練るのですが……。透き通るような歌声は、エトワールでも堪能することができますよ。

 紅緒のたくましさに惚れて子分を申し出る車引きの牛五郎は、飛龍つかささんが演じています。前回はコメディを得意とした天真みちるさんが大活躍でしたが、飛龍さんも負けてはいません。滑舌のいいセリフ回しと、濃ゆい元気さで生き生きと演じていて、愛しさこみあげるキャラナンバーワンに躍り出ていました。

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

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