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劇場をいかに安全に再開してゆくか

集団感染は冷静に原因をさぐり、「他山の石」に

岸正人 「公益社団法人全国公立文化施設協会」事務局次長兼事業課長

小劇場で発生した集団感染のショック

拡大新型コロナウイルスの集団感染が発生した公演が行われた小劇場「新宿シアターモリエール」の入り口=2020年7月13日、東京都新宿区
 東京都新宿区にある民間小劇場で行われた公演で、新型コロナウイルスによる集団感染(クラスター)が発生した。都内の劇場では感染防止のガイドラインに沿って客席を半分に減らして公演が再開され、全国の公立ホールでも夏から秋にかけての公演や学校行事などの実施が検討され始めていたタイミングでのこの出来事は、多くの劇場関係者や観客に衝撃を与えた。

 私が勤める「公益社団法人全国公立文化施設協会」(全国公文協、全国の公立ホールや劇場などを会員とする統括団体)は、2020年4月7日に発せられた緊急事態宣言で全面的に活動が止まっていた施設の再開に向けて、「劇場、音楽堂等における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン」(5月14日付け、25日一部改訂)を作った。これは、民間の小劇場で作る「小劇場協議会」などの団体にも広く参照され、活用されている。その作成にあたった一人として、公演の安全な実施を目指した指針作りを振り返り、今後の感染防止について考えてみたい。

 集団感染が発生した「新宿シアターモリエール」は、新宿駅東口から徒歩4分ほどの複合ビルの中にある民間小劇場だ。1階の入り口から階段を上がると、2階に間口5間(約9メートル)の小ぶりなステージがある。定員は186席で、基本はフラットな床に椅子が置かれる。通りに面した壁面には縦型の窓が並ぶ。演劇関係者にはよく知られた劇場で、お笑いのライブや小劇団の公演でにぎわっていた。

 この劇場で6月30日から7月5日まで上演されたライズコミュニケーション主催の公演『THE★JINRO―イケメン人狼アイドルは誰だ!!―』で、集団感染が発生した。濃厚接触者は約850人。7月15日までに、出演者17人、スタッフ8人、観客34人の合計59人(主催者発表)の感染が確認され、その後も増えている。遠方から訪れた観客もいて、感染者は全国各地に広がった。

 感染が分かった直後に劇場と公演主催者はそれぞれ、小劇場協議会や全国公文協のガイドラインなどに沿った感染防止対策を講じていたと説明した。しかし、小劇場協議会は、劇場側への確認で「当協議会のガイドラインに従った感染防止策をご利用団体と協議していたものの、徹底・遵守していただけなかったこと」が判明したと、7月14日付けで発表した。出演者や観客への取材で、ガイドラインを守らない行動があったという報道もある。

 こうした点について、全国公文協も主催会社に問い合わせをしているが、関係者が入院されていることもあり、詳細はまだ定かではない。

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筆者

岸正人

岸正人(きし・まさと) 「公益社団法人全国公立文化施設協会」事務局次長兼事業課長

スパイラルホール(東京都港区)、世田谷パブリックシアター(東京都世田谷区)、山口情報芸術センター(山口市)、神奈川芸術劇場など多くの民間・公共劇場の開設準備や運営、制作に携わる。東京都豊島区のとしま未来文化財団で「豊島区立舞台芸術交流センター」あうるすぽっと支配人、東京建物 Brillia HALL(区立芸術文化劇場)開設準備室課長を経て現職。制作者を中心とした舞台芸術の専門人材の活動活性化を図るNPO法人Explat(エクスプラット)発起人。