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劇場をいかに安全に再開してゆくか

集団感染は冷静に原因をさぐり、「他山の石」に

岸正人 「公益社団法人全国公立文化施設協会」事務局次長兼事業課長

劇場の安全な再開へ、大急ぎでガイドライン作り

拡大宮崎県立芸術劇場で半年ぶりに開催された土曜午前中のパイプオルガンの演奏会「オルブラ」。1818人収容のホールを100席限定とした=2020年6月27日、宮崎市

 新型コロナウイルスの感染拡大で、政府は2月26日に「各種文化イベント開催に関する考え方」を発表。これを受けて、全国の公立文化施設、民間劇場での公演やイベントなどが相次いで中止された。さらに学校の全国一斉休校を経て、4月7日の緊急事態宣言により多くの業種が自粛に追い込まれた。

 5月 25日の緊急事態宣言解除に先立つ5月14日、各業種・施設類型ごとに、関連団体において、その業態に即した、それぞれの感染症拡大予防ガイドラインが発表された。全国公文協も、連休中の5月5日に所管の文化庁を通じて連絡があり、休み明けの7日からガイドライン作りに取り掛かった。

 当初から、13日には内容を確定させて、14日に公開するというスケジュールで、週末を除くと作業期間は実質5日しかない。だが、他業界のガイドラインが公開されるのに、舞台芸術関係のそれがないことだけは避けねばならない。

 政府の「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」(2020 年3月 28 日、5月4日変更)を踏まえ、専門家会議による「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(5月4日)に対応しながら、劇場や音楽堂などの施設や活動の特性から起こり得る感染発生の可能性などを想定して、政府が示した基本の感染防止ガイドライン案をカスタマイズ。関係団体や全国公文協理事などの意見を確認し、文化庁を通じて内閣官房コロナ対策推進室や政府の専門家会議メンバーからの助言を何度もいただきながら、遵守すべき事項を整理していった。

 全国公文協の会員施設は全国に約1300館あり、複数の劇場や稽古場、会議室などを持つ大きな複合施設から、地域に根ざした小ホールまで、その規模は多様だ。活動内容も幅広く、地元の芸術団体の発表会やコンサートや演劇などの興行に場を提供する「貸し館」が中心の施設もあれば、独自に公演を企画・制作したり、他地域の館と連携してツアー公演を実施したり、海外との国際共同制作に取り組んだりしている施設もある。近年は、障がいのある人たちの文化活動を促進するなど、公演鑑賞だけでない役割も広がっている。

 市町村などの直営、公益財団法人や民間企業、アートNPOによる指定管理など、運営の形態も様々だ。

 こうした多種多様な施設すべてにあてはまる指針を作るのは、非常に難しい。

 公演の内容も、出演者数人の小規模なものもあれば、スタッフだけで100人を超える大規模な催しもあるし、コンサートといってもクラシックとポップス系では客層も楽しみ方も違う。

 ガイドラインには、それぞれに対応する感染防止策を書き込むことが求められ、網羅的にならざるを得なかった。

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筆者

岸正人

岸正人(きし・まさと) 「公益社団法人全国公立文化施設協会」事務局次長兼事業課長

スパイラルホール(東京都港区)、世田谷パブリックシアター(東京都世田谷区)、山口情報芸術センター(山口市)、神奈川芸術劇場など多くの民間・公共劇場の開設準備や運営、制作に携わる。東京都豊島区のとしま未来文化財団で「豊島区立舞台芸術交流センター」あうるすぽっと支配人、東京建物 Brillia HALL(区立芸術文化劇場)開設準備室課長を経て現職。制作者を中心とした舞台芸術の専門人材の活動活性化を図るNPO法人Explat(エクスプラット)発起人。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです