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TOKIO・長瀬智也、その“愛すべき不良”としての魅力

太田省一 社会学者

ジャニーズJr.時代からメジャーデビューまで

 2020年7月22日、TOKIOの長瀬智也が来年2021年3月いっぱいをもってジャニーズ事務所を退所することが発表された。

 長瀬智也は1978年11月生まれ。ジャニーズ事務所への入所は1991年、13歳のときだった。TOKIOには当初サポートメンバーとして加入したが、1994年に彼らが「LOVE YOU ONLY」でメジャーデビューした際には最年少メンバーとしてメインボーカルを務めた。

 同じジャニーズのなかでは、ジャニーズJr.時代から堂本光一、堂本剛と年齢が近く(光一とは同学年)、仲も良い。本人の口からも語られているが、そういうこともあって当時は長瀬自身、てっきりこの2人と同じグループでデビューするものとばかり思っていた。だから光一と剛がKinKi Kidsとして活動を始めたときには、ショックを受けたようだ。

ジャニーズ事務所=東京都港区ジャニーズ事務所=東京都港区

 ただ、男性アイドルとしてのタイプという点では、長瀬智也はKinKi Kidsの2人とは異なっている。

 KinKi Kidsの場合、堂本光一がミュージカル『SHOCK』シリーズの主演を長年務めるなど華麗な「王子様」タイプとすれば、堂本剛は独特の感性に基づいたソロ音楽活動やお笑いへのこだわりなど、いつも自然体な個性派だ。

 それに対し、長瀬智也は「不良」タイプと言える。ジャニーズにおける不良の系譜は、かつての男闘呼組などバンド形態のグループが担ってきた面がある。むろんメインボーカルとしてTOKIOのアイコン的存在である長瀬も、その系譜を継いでいる。

不良的なカッコよさと、ユーモアや哀感

 加えて長瀬智也の場合、俳優としてもそうだった点が大きなポイントだろう。

 彼のドラマデビューは、1993年の学園ドラマ『ツインズ教師』(テレビ朝日系)の生徒役。このあたりは『金八先生』シリーズ(TBSドラマ系)を思い出すまでもなく、ジャニーズの定番的なデビューのパターンである。

 その後も『白線流し』(フジテレビ系、1996年放送)で主演、『Days』(フジテレビ系、1998年放送)では月9初主演を務めるなど、コンスタントにドラマ出演を続けた。また『ムコ殿』(フジテレビ系、2001年放送)では人気スター・桜庭裕一郎役を演じ、その桜庭が歌う劇中歌「ひとりぼっちのハブラシ」がTOKIO「メッセージ」とのカップリングで発売。TOKIOにとって初のオリコン週間シングルチャート1位獲得となる出来事もあった。

 そんな彼の俳優としてのキャリアのなかでもターニングポイントになったのが、『池袋ウエストゲートパーク』(TBSテレビ系、2000年放送)だろう。

 石田衣良の同名小説を原作に、宮藤官九郎が脚本、堤幸彦がチーフ演出を務めた同作は、東京の池袋を舞台にカラーギャング、つまり街にたむろする不良少年グループ同士の抗争を描いたもの。そこで長瀬智也は、元は有名な不良でありながらどのグループにも属さず、「めんどくせぇ」とぼやきながらも人の良さゆえにトラブル解決に奮闘する主人公・真島誠(マコト)を魅力的に演じ、俳優として飛躍するきっかけとなった。

 その後も不良役は続く。同じ宮藤官九郎脚本の『タイガー&ドラゴン』(TBSテレビ系、2005年放送)では落語の面白さに目覚め、ヤクザから落語家に転身する主人公・山崎虎児、『マイ☆ボス マイ☆ヒーロー』(日本テレビ系、2006年放送)ではヤクザの跡継ぎになるために年齢を10歳偽って高校に通う主人公・榊真喜男を演じ、作品ともども高い評価を得た。

映画『ソウル』のDVD(長澤雅彦監督、チェ・ミンス共演) 映画『ソウル』のDVD(長澤雅彦監督、チェ・ミンス共演)
 これらの作品からもわかるように、長瀬智也が演じるのは、
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