ライブ配信奮闘記(上)
2020年08月20日
5月から、YouTubeで浪曲の配信を始めています。
おかげ様で、いろんな反響があって、びっくりするやら、嬉しいやら。
配信なんて、やるもんかって思っていたのに。
3月からほぼお仕事がなくなり、呆然とする中で、素早く行動を起こしておられたのは、噺家さんたちでした。
いやいや、それよりもっと前に動いていた人がいた。
コロナ禍以前に、講談の神田伯山さんが、襲名披露と同時に開設したのが、YouTubeの「神田伯山ティービー」。これが毎日配信、披露興行の楽屋まで映して、すごい登録者数、再生数。この業界、幕内に入ったら、客席に座ることはできません。なのに、動画で、正面から披露興行の様子が見られる。自由すぎる噺家の師匠方の楽屋風景なども、見られる。
「お、お、おもしれ~~~っ!」
と、家でだら~んと見てました。
もう一つすごいな~と思ったのが、橘家文蔵師匠が始められた「文蔵組落語会」。
コワモテなタイトルの、これは有料配信でした。でも、これだって、チケット買っちゃえば正面から見られるんだもんね~、わー今日のゲストは柳家喬太郎師匠だあああああっ!!!……なーんて、すっかり客になってチケット購入、さすがお金をとる配信だけあって、場の設営もカメラも照明も段取りも、一味違っていて、正面から文蔵師匠、喬太郎師匠を見られる幸せを味わいながら……。
「クオリティ、たっか~~~~い!」
完全に、客。
でも……自分がやる気はまったく起きませんでした。
「配信やりませんか」のお誘いはいくつかありました。
お断りしてました。
浪曲は、落語や講談とは、ちょっと違うんです。
物語を語る芸ではあるんですけれど、ひとくちに言ってしまえば「声」ひとつが要の芸なのです。
極端に言えば。
たとえその物語が、大した事件の起きないつまらないものであったり、説教臭い通俗的なものであったり、現代の価値観とは合わない古臭いものであったとしても。
とんでもない身体能力を持つ浪曲師が腹底から声を張って一席語ると、その声の渦に巻き込まれて、物語なんかよくわかんないけど、滂沱(ぼうだ)の泪が流れている……。
そういう芸なんです、浪曲って。
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