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キューバ現地報告――コロナ禍の中、世界的活躍と生活面への陰りのなかで

板垣真理子 写真家

 キューバに滞在し始めてもうすぐ半年が経過する。最初と最近のそれぞれ1カ月と少しを除き、3カ月以上がコロナ禍の中、宿泊先での待機であった。しかし流れてくるニュース、外国人としての幽閉状態から今に至る待機解除、キューバの人たちの生の現実の動向と、ここにいなければわからない、体験できないことなどを書くことになった。

 しかしその前に、さほど一般的ではないこの国の状況にも触れておかなければ、話は進まない。まずそこから行こう。

3月24日のロックダウン直前の、グランテアトロ前のカラフルな車たち。この活気が戻るのはいつなのか=撮影・筆者3月24日のロックダウン直前、グランテアトロ前のカラフルな車たち。この活気が戻るのはいつになるのか=撮影・筆者

 知る人ぞ知る、医療先進国。コロナ禍が始まる以前から癌の治療薬などの開発も目覚ましく、国交が開かれる以前の米国からも肺癌の治療をしたい人がお忍びで入国していたような国である。

 また、常に世界数十カ国へ医療団を派遣しその地の人々の命を救い続けてきたキューバは、コロナ禍の時代にも活躍しないわけがない。実際に現在、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)に有効とされた既存薬と、開発された新薬は合わせて20種類にも及び、45カ国以上からの援助要請を受け、医療団がその薬とともに出向いている。

 現在10万以上の人々の命を助け、今もその数は増え続けている。中国の武漢に始まり、感染爆発の起きたイタリア、スペインなどのヨーロッパ各国と、アルゼンチンの他、医療の行きわたりにくい中南米やアフリカ各国からの要請も続いた。命をかけた援助を惜しまない医療団に感謝をこめて、今ノーベル平和賞に推す動きが世界各国から起きている。当然とはいえ嬉しいニュースである。

米国の経済封鎖による経済的社会的ストレス

 しかし一方では、キューバの活躍に対する米国の歯ぎしりが聞こえてきそうな動きもある。何故そこまで、という疑問はおいて、実際の動向の一部をお伝えする。中国から中南米他24カ国に向けて送られた医療物資などが、キューバ向けのものだけ米国にブロックされてしまう事件が起きた。また、人工呼吸器を供給していた在米のスイスの会社が米国企業により買収され、事実上、この会社からキューバに呼吸器が送られることは不可能になった。

 さらには、カリブ海域に米、イギリス、フランスの軍艦が出向くという、事実上海上封鎖となる不穏な出来事も発生。しかし、その後米国の軍艦から感染者が発生して、帰国を余儀なくされた。在米のキューバ大使館襲撃もあった。現在では、在米国キューバ人の母国への送金禁止などもろもろの圧力が続いて、コロナと闘うべき時代に経済的社会的ストレスを与えられ続けている。

 この米国による経済封鎖については、28年連続、国連決議で「解除すべき」票が米国自身とイスラエルの2カ国を除く(2019年にブラジルが米側についた)圧倒的多数を占めている。にもかかわらず、米国はその決議を無視し続けている。しかし、キューバの活躍が気に入らない米国は、キューバ医療団を「人身売買」と罵り、当然キューバはこれに猛反発した。

ロックダウン前夜のカピトリオ(元の国会議事堂)と、隣のグランテアトロの夜景。カピトリオは、2019年のハバナ市政500年祭に間に合わせて、8年ぶりに美しく蘇ったロックダウン前夜のカピトリオ(元の国会議事堂、左)と、隣のグランテアトロの夜景。カピトリオは、2019年のハバナ市政500年祭に間に合わせて、8年ぶりに美しく蘇った=撮影・筆者

 また、しっかりコメントしておきたいのは、キューバのこの使命に

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