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「21世紀のアフリカ」がもたらす衝撃――世界と日本の未来を考える3冊

駒井 稔 編集者

アフリカが日本に問いかけてくること

 もう一冊、アフリカの新しい事情を描いた本を紹介しましょう。『アフリカを見る アフリカから見る』(白戸圭一、ちくま新書)です。2019年8月の刊行ですから、最新のアフリカ事情が盛り込まれています。著者の白戸圭一さんは、元毎日新聞社のヨハネスブルク特派員。現在は立命館大学国際関係学部で教鞭をとっています。他にもアフリカに関する優れた著作があります。

 帯に「それ、いつの時代のアフリカ観?」とあり、思わず手に取ってしまいました。確かに、アフリカは、まだ多くの日本人にとって、遠いのは間違いありません。著者が大学の探検部の一員としてニジェールに足を踏み入れたのは1991年。以来30年に及ぶアフリカとの関わりからもたらされる記述は、目から鱗とはこのことかというくらい衝撃的です。

 私の印象に強く残ったのは、著者が数年前から感じていた「昔とは何かが違う」という言葉です。アフリカの都市部は、人が増え、日本以上の過密になっていて、以前のような開放感がない。また、ラッシュ時の交通渋滞は凄まじい。これだけでも私たちの旧来のアフリカ観をひっくり返すに十分なインパクトがあります。

アフリカ最大級の都市ラゴス(ナイジェリア) Ogunpitan Adeyemi/Shutterstock,com拡大アフリカ最大級の都市ラゴス(ナイジェリア) Ogunpitan Adeyemi/Shutterstock,com

 サコさんの本でも人口問題には触れられていましたが、本書によれば、サハラ砂漠以南のアフリカ49カ国(サブサハラ・アフリカ)では、かつて人類が経験したことのない勢いで人口が増えていき、国連の予測では、2100年のこの地域の人口が、人類の3分の1以上に相当するという記述に衝撃を受けました。

人口爆発するアフリカと、人口が減り続ける日本。両者は今後、それぞれが直面する課題の解決に向け、協力することができるだろうか。

 これは長い射程を持った考え方を日本人が獲得することができるかという重大な問いかけだと思います。アフリカと日本の将来を見据え、ビジョンを描くことのできる政治的指導者は、果たして現れるのでしょうか。

「もう援助は必要ありません。日本企業の皆さん、ぜひ投資してください」。ここ数年、アフリカ諸国の政府関係者から、そんな言葉を聞く機会が増えた。

 本書によれば、過去10年、世界はアフリカ投資ブームに沸いてきたということですが、日本企業も、ナイジェリアを中心に「味の素」が、ケニアでは「日清食品」がインスタントラーメンの販売で名を馳せたということです。

 著者はまた、日本人について、そのまじめさについて、期せずしてサコ学長と同じ意見を述べるのです。

サービス産業の常態化。異様な長時間労働の末の過労死。学校でいじめられても学校に行くことをやめられず、挙句の果てに自ら命を絶ってしまう子供。こうした日本社会の様々な悲劇の根底に、我々の過剰な「まじめさ」が生み出す「余裕の欠如」があるのではないかということを、私はアフリカの人々との付き合いの中で感じてきた。

 アフリカが問いかけてくる問題は、深く日本の本質に関わってくることが分かります。再度問います。この問題に解決策はあるのでしょうか。

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筆者

駒井 稔

駒井 稔(こまい・みのる) 編集者

1979年、光文社入社。1981年、「週刊宝石」創刊に参加。1997年に翻訳編集部に異動になり、書籍編集に携わる。2004年に編集長。2年の準備期間を経て2006年9月に古典新訳文庫を創刊。「いま、息をしている言葉で」をキャッチフレーズに古典の新訳を刊行開始。10年にわたり編集長を務めた。筋金入りの酔っ払いだったが、只今禁酒中。1956年、横浜生まれ。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです