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【公演評】宙組『壮麗帝』

桜木みなとが男役の色気と貫禄が生きる伝説の皇帝で、ドラマシティ初主演に挑む

さかせがわ猫丸 フリーライター


 宙組公演オリエンタル・テイル『壮麗帝』が、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演されました(8月14日~18日)。

 最近ますます男役らしさと色気を増す宙組のホープ・桜木みなとさんが、待望のドラマシティ初主演に挑みます。この公演も他公演同様、新型コロナの影響で日程が延期・縮小され、東京公演が中止になってしまいました。しかし、そんな厳しい状況をもはねのけるように、桜木さん率いる宙組生29名と専科の悠真倫さんが、パワーあふれる舞台を披露しました。

 物語は、隆盛を誇ったオスマン帝国の皇帝スレイマンの半生を描いた歴史ロマンです。壮麗帝と称されたスレイマンと、ただ一人、彼が心から愛したヒュッレム、そして右腕となって国を盛り上げたイブラヒムを中心に、ドラマチックな人間模様を描きだしました。

貫禄と新鮮さを併せ持つ桜木

 ――16世紀初頭、勢力を増すオスマン帝国では、若きスレイマン(桜木)が第10代皇帝となった。奴隷から小姓にしたイブラヒム(和希そら)とともに、いつかこの世界をまとめようと希望を燃やしている。そんなある日、スレイマンはイブラヒムを連れ、おしのびで訪れた街で、売られて行く娘アレクサンドラ(遥羽らら)と出会った。助けを求めながらも悪態をつくその娘が気になったスレイマンは、奴隷商人から買い上げるのだった。

 オープニングはオリエンタルなダンスシーンから。遥羽さんを中心に、お腹を見せた衣装の娘役たちが華やかに踊る中、桜木さんが登場します。パーンと放つオーラがまぶしく、真ん中にふさわしい存在感を冒頭から放ちました。

 スレイマンは国を統治するのにふさわしく、ルックスも佇まいも威厳もたっぷり。しかし、朗らかで心優しく、慣習にとらわれない柔軟さも持つ若き皇帝を、桜木さんはみずみずしく演じていました。色気と貫禄が急上昇中で、フレッシュさも残る今の桜木さんには、絶妙な役柄だったかもしれません。

 スレイマンはまず、奴隷として買われてきたイブラヒムの才覚を見出し、自らの小姓へと招き入れました。厚い信頼で結ばれた2人の関係性は、この物語の大きな軸となっています。イブラヒムを演じる和希さんと桜木さんの息もピッタリで、歌唱力の高いデュエットは聞きごたえも抜群でした。

 さらに、その後、妻となるアレクサンドラも、イブラヒムと同様に奴隷から引き上げました。通常なら身分の差がありすぎて、視界にさえ入らない者でもチャンスを与えるスレイマン。その度量の大きさに、思わず惚れずにはいられません。

 そんな懐深いスレイマンですが、統治者ゆえの孤独や苦しみの大きさもまた、はかりしれないものがありました。皇帝として表には出さない感情をいかに表現するか……桜木さんの演技力に、客席は少しずつ少しずつからめとられていくようです。

 専科の悠真倫さんが宮廷史マトラークチュ役で、ストーリーテラーとして物語を引き締めていたのも印象的でした。

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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