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貧富の差や中央・地方の格差が広がる今こそ徳川家康に学べ

直木賞作家・安部龍太郎さんがライフワークの『家康』で描きたいこと

梓ゆかせ フリーライター

拡大安部龍太郎さん

 神君として崇められた姿でも、狡猾なタヌキ親爺でもない「人間味あふれた、新たな家康像」を描きたい…。歴史小説の大家で直木賞作家の安部龍太郎さん(65)が、ライフワークの『家康』(幻冬舎刊)に取り組んでいる。構想では、文庫本で全18巻となる大作だ。

 凡人だけど、人の意見によく耳を傾け、人間的成長を重ねて行く家康。信長、秀吉とは違った「農本主義・地方分権」の国家を目指し、250年の太平に結び付けた天下人。安部さんは、貧富の差や地方との格差が広がるばかりの今の日本社会こそ「家康に学ぶべき」と訴える。

「戦国時代」の新たな歴史観を示したい

 古代から明治維新まで、あらゆる時代の歴史小説を書いてきた安部さんだが、とりわけ「戦国時代」には思いが強い。これまでの定説や学校で教えられる歴史観に違和感を覚えているからだ。

 「一番の不満は『外国からの視点』に欠けていることです。〝鎖国史観〟で戦国時代を見ていては、この時代の変化を理解することはできません。キーワードは、大航海時代における、鉄砲・キリスト教・銀の三つ。これを制した戦国大名が勝ち上がり、天下をうかがうようになってゆくのです」

 安部さんが『家康』を書くのも、その新たな歴史観を示したいことが大きな理由だ。

 徳川家康(1543~1616年)は、戦国期から江戸時代初期まで生き抜き、戦(いくさ)ならば、桶狭間の戦い(1560年)から、大坂夏の陣(1615年)まで、ほとんどに関わってきた稀有な大名である。先の三つのキーワードを制して、天下統一に近づいた信長や、その跡を継いだ秀吉に従いつつ、2人とは違う国家観を示し、江戸時代の幕藩体制を築いたのが家康だった。

 「信長と秀吉が掲げたのは、ポルトガルやスペインなど外国勢力に対抗できる力を持った、『中央集権・重商主義』の国家でした。これに対して、家康は、多くの民が食べていける、格差の少ない『地方分権・農本主義』の日本を目指します。これによって『パクス・トクガワーナ(徳川による平和)』と言うべき、長く安定した太平の世を築きました。家康を描けば、この時代の『本当の姿』が分かるでしょう」

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筆者

梓ゆかせ

梓ゆかせ(あずさ・ゆかせ) フリーライター

1968年京都市出身 地方紙記者から、フリーライターへ。事件、スポーツ、芸能・文化などの分野で執筆活動を行う。