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貧富の差や中央・地方の格差が広がる今こそ徳川家康に学べ

直木賞作家・安部龍太郎さんがライフワークの『家康』で描きたいこと

梓ゆかせ フリーライター

日本社会が家康から学ぶものは

 歴史小説を書き続ける意味は、「過去から学ぶ」ことだと考えている。それは時にして、現状の課題を解決し、未来への発想力にも繋がってゆく。

 安部さんは、家康が掲げた「農本主義・地方分権」は、先の大戦の敗戦から日本が立ち上がった戦後復興に似ているという。

 「秀吉の無謀な朝鮮出兵によって、日本の社会は疲弊し、農村は荒廃しました。家康は、そこから日本が立ち直り、安定させることを考えねばならなかった。その答えが『農本主義・地方分権』です。関ケ原の戦い(1600年)は、重商主義(西軍)と農本主義(東軍)の戦いでした」

 では、現在の日本社会が家康に学ぶべき点は何か?

 安部さんは「城下町」の発想を挙げた。家康が築いた幕藩体制は、全国の300諸侯がそれぞれの創意工夫で〝食ってゆく〟こと。自立自存を目指した。ところが明治維新で中央集権体制が復活。以来、税金の流れや権限移譲を進める地方分権は、掛け声ばかりで今も進まないまま。貧富の差や中央と地方の格差は広がるばかり。過疎化によって維持が困難になった限界集落の出現にも歯止めがかからない。

 「ここまで不均等になった国土を再生させるには、各地方であらゆる機能を集約させた『コンパクトシティー(中核都市)』の形成を目指すべだと思う。そこには保育園から大学、病院、お寺、商工業と全部が揃っている。これは戦国大名が『城下町』を築いた発想です。(家康がつくった)江戸幕府の藩はどんなに小さくも藩校を持っていました。医療、教育、社会保障を各藩が自立してやっていたのです。今こそそれに学べ、ですね」

拡大安部龍太郎さん

安部龍太郎(あべ・りゅうたろう
1955年6月、福岡県出身。久留米工業高専卒。東京・大田区役所勤務を経て、88年「師直の恋」を発表。90年「血の日本史」で単行本デビューした。2005年「天馬、翔ける」で中山義秀文学賞、13年「等伯」で第148回直木賞を受賞した。主な著書に「信長燃ゆ」「宗麟の海」など歴史小説を中心に精力的に活躍している。ライフワークとする「家康」は文庫版1~6巻を12月までの毎月、順次刊行。

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筆者

梓ゆかせ

梓ゆかせ(あずさ・ゆかせ) フリーライター

1968年京都市出身 地方紙記者から、フリーライターへ。事件、スポーツ、芸能・文化などの分野で執筆活動を行う。