メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

韓国KBSの8.15音楽特番に出演!

ミン・ヨンチ ミュージシャン 韓国伝統音楽家

 7月半ばのある日、携帯が鳴る。知らない番号からだ。

 「KBSTVの作家ですが、ミンヨンチさんですか?」

 「はい」

 「KBSTV1の8月15日の音楽特番に出演していただきたいのですが、いかがでしょうか?」

 ん?? なんで、私に? とも思ったがめったにない機会だし、二つ返事で「スケジュール大丈夫です。よろしくお願いします!」。

 KBSとは韓国の国営放送局であり、地上波チャンネルもいくつかあり、デジタルチャンネル、ラジオと韓国で1番大きい放送局で、日本でいえば、NHKと日テレをたしたみたいな放送局です。

 そのKBSTV1の8月15日の音楽特番となると、これは大きな番組に間違いない。シメシメ。

 普段、劇場での公演は沢山するのものの、大体が何かの行事で演奏しているのを撮られてのTV放送か、インタビュー的におしゃべりするのが大概なわけで。でも今回はメインで演奏ができるということでいつになく気合が入る……。(8.15KBS音楽特番の動画は記事末尾に!)

本番の舞台。KBSホール。

韓国伝統ミュージシャンと西洋ミュージシャン

 今回の番組は、8.15の特番。

 日本では8月15日は終戦日になるが、韓国では解放された光福節。

 祝日になるので、テレビでは1日中特番や歴史スペシャル的な放送をする。

 その日の午後5時半からのオンエアの音楽番組。『あなたが、大韓民国です』という、うたばん。

 なぜ私を選んだのかを作家に尋ねると、YouTubeで私を見たという。オデッセイという曲で、オーケストラと一緒に演奏しているのを見て、この番組にぜひ出てほしかったと。

 ほう、これはうれしいではないか!!

 だって韓国のテレビ局も、芸能事務所パワー満開で、そうやって音楽番組の出演陣や、曲のヒットチャートも左右していますから、直接作家さんから、しかも自曲をリクエストされるということは、本当に珍しいことなのです。

 けどここで問題。オデッセイという私の曲は、15分の長さのオーケストラのコンチェルト。

 しかし今回の放送で私に与えられた時間は、4分半。

 こりゃ大変だ、15分の曲を4分半にアレンジしなおさなければいけない……。

 それとコロナの影響で、KBS交響楽団をフルで使えなく、ストリングスだけになるという。そこで、湧いて出たアイデアが、ストリングスにプラスして、以前から付き合いのある、国楽室内楽団「イサン」に出演協力をお願いした。

国楽室内楽団「イサン」

 まずは、その「イサン」チームの作曲家と、15分から4分半への編曲と、楽譜作成。

 次はイサンと私だけのリハを動画で撮り、作家やKBS交響楽団ストリングスに楽譜と一緒に送る。

 そして数日後の本番前々日に、全員での音楽リハーサル。

 だがここで問題発生、KBS交響楽団の音楽監督が、この曲のリズムをうまく理解できず苦戦。けど大丈夫。こういうことは西洋側の音楽陣とやる際にはよくあることで。その詳しい理由は、よろしければ私の論座記事『韓国伝統音楽「5拍子10拍子の世界」へようこそ!』をお読みください。

 とにかく、韓国伝統ミュージシャンと西洋ミュージシャンでは、リズムの取り方や創作方法がちがうので、初めは苦戦するのです。

 けど腹が立ったのは、このKBS交響楽団の監督がちょっとクセが強い音楽監督で、変拍子の所がうまく合わなかったので、自分があっている! 私たちが間違っている! と、みんなの前で豪語! びっくりして、思わず楽団を見渡す。

 でもその時、KBS交響楽団のみなさんたちが、その声を無視し、私の目を見て、「大丈夫、大丈夫。ミンさんが合ってる」みたいなサインを目で送ってくれた。腹が立ったけど、そこで私も大人になって、うまく流し無視することにした。

 どこにでもいるのです、自分の間違えに気づかず、他人のせいにする人。

 イラっとしたけど、こんなことで本番に差し支えがあったらつまんないので、忘れることにした。私も大人になったもんだ。一昔前だったら、大暴れしていたでしょう。

8.15の僕の出番、オデッセイを動画で!

 そして課題はもう一つ、衣装。

 私には昔から来てみたい衣装があった。

 私の大好きなアーティスト、デビッドボウイのアルバムのジャケットで、イギリスの国旗が背中に描いてあるコートを着ている写真を見て、私もこんなのを1回着てみたい!! と思っていた。で、よしっ!! 今でしょ!! と思って、背中に韓国の国旗を描いた衣装を作って着ることにしました。

 国旗の衣装!? いえいえ、まったく政治的な意味はないのです。

 わたしは国旗もアートだと思っているので、それをアートとして着てみたかったのと、あとは、日本の嫌韓の方たちへのアピール。そして、韓国での「在日あるある」でもあるが、私のことを未だに「日本人、日本人。日本の匂いがする」と嫌味っぽく言ってくる韓国人の方たちがいるので、その幼稚な両者に対してこの衣装を着てやったのです。ははは。 

 本番の日はコロナの影響で無観客。

 朝リハーサル、午後カメラリハーサル、そして本番と、結局計3回演じなければいけなかった。3回演じるのは結構疲れます……。こういう時、リハーサルを真面目にやるアーティストと、そうではないアーティストがいますが、大体、新人と大御所は真面目に一生懸命リハーサルもします。

 だが、今回一緒した出演陣の大半が韓国のオーディション番組で1等になり、急に有名になった歌手たちが多かった。トロット(韓国の演歌)やアカペラのオーディション番組で最近優勝したとかなんとか。8月15日のゴールデンタイム番組なので、今話題の視聴率撮れる系の歌手達だ。けどこれがまた、リハーサルも適当、廊下ですれ違ってもあいさつもしない。もっと業界の事、勉強しなさい!! と思ったが、ミン・ヨンチも大人になり、ポーカーフェイス+スマイルなので受け流しました。

 そんなこんなで、無事本番終了。オンエアもいい感じでした。

 意味ある番組でした。光福75周年記念『あなたが、大韓民国です』。あなたとは、在日コリアンを指していて、韓国で在日コリアンの歴史などを取り上げるなんて、あんまりないので、ホントありがたかった。楽しかった。

 KBSホールで撮りましたが、なんかNHKホールにも似ているなと感じた。特番なので、進行や演出を見ていると、NHKのニューイヤーオペラコンサートにゲスト出演した時のことも思い出した。

 それでは8.15の僕の出番、オデッセイを動画でお楽しみください!!