メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

日傘と半ズボンは熱中症から男性を守る

「スーパークールビズ」に半ズボンを含めよ

杉田聡 帯広畜産大学名誉教授(哲学・思想史)

 今年はすさまじい猛暑の日が続き、連日、熱中症患者が続出していると報じられてきた。搬送された人の多くは冷房のない室内にいた高齢者が多いようだが、当然ながら、炎天下に外を歩く、あるいは外ですごす場合にも十分な配慮をほどこさなければ、熱中症にかかる危険性は今後も大きい。

 これに対して、どのような対処ができるのか。ここでは男性について考えたい。

#Ku Too運動の広がり

 昨年(2019年)から、#Me Too運動にひっかけた#Ku Too運動が、広がりを見せた。

#KuTooの署名サイト職場でのハイヒールやパンプス強制に反対する#Ku Too運動の署名サイト

 ここで問われたのは、接客系などの職場で女性に強いられるハイヒールやパンプス(ヒールがあり足の甲が覆われない女性用の靴)だったが、まず言えば、ジェンダーを問題化する各種運動の流れからすれば、一般に女性のものとされ、多かれ少なかれ女性が幼い頃から身に着けさせられるスカートについての各人の選択権も、当然尊重されなければならないだろう。

 例えば制服としてのスカートは、以前から話題とされてきた。すでに2003年には北海道の高校で、冬の寒さしのぎを目的にズボン着用が許された例がある(朝日新聞2003年11月29日付)。最近では、「動きやすさ」の観点から、ズボンを選択できるようにする流れが生まれている(同2019年1月30日付)。また、トランスジェンダー等の「性別表現の自由」という観点からも(同2020年1月13日付)、他のもろもろの観点――性被害、機能性、寒さ、脚を見せることへの忌避感等――からも(同2020年3月3日付)、制服問題が取り上げられるようになっている。

 おそらく同種の問題は、中高生の制服に限らず、今後より広く問われるようになるだろう。

男性にとっての#Ku Too

 女性に関わる問題はこれ以上論じない。ここではむしろ、現今の猛暑下での男性にとっての大いなる「苦痛」を問題にしたい。

 今、男性は非常に暑い思いをしている。私が見るところ、それは、

(1)日傘をさすことに対して奇異な目を向けられる(男性自身がそのような目を内面化している)こと
(2)職場等の「公的」(公務に関わるという意味ではなく、私的な行動ではないという意味で)な場面では半ズボン着用が許されないこと

 この2つに、由来する。

男性と日傘――「まなざしの地獄」

 女性は昔から日傘をさす習慣があるが、男性にはない。男性の場合、好奇の目にさらされるため、使いたくてもなかなか使えない。それで帽子をかぶる男性もいるが、帽子で守れるのはせいぜい頭だけである。それに帽子をかぶると、すぐ頭が蒸れてたまらなくなる。

 日傘ならそうした心配はいらない。しかも日傘なら、体のかなりの部分を直射日光から守ることができる。だが、近年、男性用の日傘も売られるようになったというのに、首都圏での見聞を含めて言えば、男性が日傘をさしている姿を、私はほとんど見たことがない。

男性向けの日傘も販売されているが、日傘に抵抗感をもつ男性が圧倒的だ男性向けの日傘も販売されているが、日傘に抵抗感をもつ男性が多数派だ

 私は以前から、白いビニール傘を日傘がわりに使っていたが、やはり奇異の目で見られることに、ためらいを抱いていた。特に職場に近づき学生に日傘姿を見られるのを、多少恐れていたように思う。日常生活の「規範」(習慣・慣習)から外れた場合、「まなざしの地獄」(見田宗介)を経験することが多い。だから人は――私も――事前に自己規制をしてしまうのだが、そうするには夏の日ざしはあまりにきつい。

 ビニール傘でも一定の効果はあるが、

・・・ログインして読む
(残り:約2803文字/本文:約4263文字)