鈴木理香子(すずき・りかこ) フリーライター
TVの番組製作会社勤務などを経て、フリーに。現在は、看護師向けの専門雑誌や企業の健康・医療情報サイトなどを中心に、健康・医療・福祉にかかわる記事を執筆
※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです
長尾クリニック院長・長尾和宏医師に聞く(下)
――人生会議といえば、芸人のインパクトのある啓発ポスターが炎上した記憶があります。
長尾 そう、それです(苦笑)。
――改めてどういうものか教えてください。
長尾 比較的元気なときから、もしものときにどんな医療を受けたいかについて家族を含めて医療、介護スタッフで何度も話し合うことを「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」といいます。国は2018年に、これを「人生会議」と呼ぶことに決めたんですよね。
人生会議の核は、最期はどうして欲しいのかという本人の意思です。それを「リビングウィル(living will)」という文書に残しておいてくれると、医師はたいへん助かります。
――それがあると医師がその意思を尊重した医療を提供できる。
長尾 先進国ではリビングウィルは法的に担保されています。台湾は2000年に、韓国は2018年に法的担保を終えています。日本はそもそも議論がなされていないので、トラック競技でいったら世界標準より10周遅れです。それどころか、国は2019年11月まで本人が意思表示することすら否定していましたから、20周遅れかな。
――2019年11月といえば、つい最近の話です。
長尾 僕は公益財団法人日本尊厳死協会の副理事を拝命しています。リビングウィルを啓発することを目的とする日本尊厳死協会は、1976年に設立された市民団体ですが、公益法人申請が認められませんでした。
その唯一の理由は、なんと「患者がリビングウィルを表明すると医師の訴訟リスクが高まる」でした。わかりやすく言うと「患者さんが自分の意見を述べることはよくない」と。「えっ!?」て思うでしょう?
――それは、むしろ逆ではないでしょうか。
長尾 そう。でも、国の考えは真逆で、
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