2020年09月08日
1960年代を起点に日本の男性アイドルの歴史をたどってきたこの連載も、いよいよ終わりに近づいてきた。そこで連載の締めくくりとして、2回にわたって現在の男性アイドルの状況について考えてみたい。その前半パートとなる今回は、ジャニーズの近年の変化、現在の動向についてみていきたいと思う。
ここまで書いてきたように、ジャニーズはテレビとともにその地位を築いてきた。元々は舞台、とりわけオリジナルミュージカルへの夢が出発点だったとしても、そこにテレビというもうひとつの場があることでジャニーズは今日のような影響力を有する存在になったと言えるだろう。舞台とテレビは、いわばジャニーズという車の両輪であった。
一方でそういう歴史もあってか、ジャニーズはわりと最近までインターネットという場に関心を示してこなかった。むしろ、肖像権保護などの理由からネットに対して厳しく一線を引いてきた。たとえば、数多くの雑誌の表紙を毎号のように飾るジャニーズだが、その画像がネットで紹介される際にはジャニーズのタレントのところだけマスキングされて映っていないようなことが続いていた。
しかし、そんな状況も徐々に変わってきた。少しずつネット上での写真が解禁され始め、2018年1月には記者会見や舞台あいさつなどの写真も条件付きではあるが解禁された。その間、ネットドラマにジャニーズ所属のタレントが出演することもあった。この一連の流れに、ジャニーズファンのあいだからは驚きの声もあがっていたと記憶する。
さらにそれにとどまらず、より大きな時代の転換を感じさせるような出来事があった。同じ2018年3月、ジャニーズ事務所がYouTubeに公式チャンネル「ジャニーズJr.チャンネル」を開設したのである。
同チャンネルでは、ジャニーズJr.の5つのグループがそれぞれ担当曜日を決めて、1週間に1度定期的に動画を配信する。内容はパフォーマンスを見せるもの、バラエティ的なもの、メンバーそれぞれの素顔を見せるものなどなんでも自由。企画自体も各グループが話し合って立案し、そのミーティングの様子が動画としてアップされることもある。開設時点で担当となったのは、Snow Man、Travis Japan、SixTONES(ストーンズ)、美 少年(開設時は東京B少年)、HiHi Jetsの5組だった。
この背景には、アイドル界全体におけるネット戦略の重要性の高まりがある。アイドルの基本的魅力は、親近感にある。その点を踏まえれば、テレビよりもいっそう身近さを醸し出しやすいネットがアイドルにとって相性の良いメディアであることは明らかだろう。
ただこの点に関しては、女性アイドルのほうが先んじていた。たとえば、AKB48などのAKB48グループでは、ジャニーズよりもかなり早くからSNSや動画配信の活用を始めていた。そこからYouTubeのメイク動画が評判になったNMB48・吉田朱里のように、動画や生配信がきっかけで注目されるメンバーも現れた。
ジャニーズのネット進出が遅れた理由としてひとつ考えられるのは、
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