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チャイコフスキーコンクール優勝から20余年 声を磨き上げた佐藤美枝子

第50回ENEOS音楽賞(旧JXTG音楽賞)洋楽部門の本賞を受賞

伊熊よし子 音楽ジャーナリスト・音楽評論家

中学3年でクラシックに目覚めて

 佐藤美枝子は子どものころから歌が大好きで、小学生のころは流行歌を好んでうたっていた。やがて合唱団に入り、ある発表会で先生がうたうイタリア歌曲を耳にする。

 「こんなにすばらしい歌があったんだ」

拡大藤原歌劇団「夕鶴」から ⓒ公益財団法人日本オペラ振興会
 クラシックに目覚めた彼女は、中学3年から本格的に勉強を開始し、高校2年でマリア・カラスのうたう「歌に生き、恋に生き」(プッチーニの歌劇「トスカ」でうたわれる名アリア)の録音を聴き、オペラ歌手を目指すようになる。しかし、18歳のころには昔気質の父親から「お見合いをして、早く嫁に行け」といわれ、3人姉妹の長女だった彼女は音楽大学に進む夢を断念せざるを得ない状況に陥った。

 「でも母が、私の夢がかなうよう父の会社の仕事を手伝いながらアルバイトをし、音楽大学の授業料を出してくれたのです。母は女性でも、何かひとつ秀でたものを身につけることが大切だと考え、最大限のサポートをしてくれました」

 1994年には日伊声楽コンコルソ第2位、95年には日本音楽コンクール声楽部門第1位を獲得。ようやく父親も声楽家の道に進むことを認めてくれた。そしてついにチャイコフスキー国際コンクールで頂点に立ったのである。

声、からだと対峙し、内面と向き合い……

 とはいえ、コンクールまでの道程もけっして樂なものではなかった。武蔵野音楽大学に進み、憧れのマリア・カラスのようなドラマティックで情熱的で迫力に富む曲をレパートリーとしたが、大学のオペラコースには入れず、卒業演奏会にも出られなかった。さらに国際コンクールではどうしても第1位を獲得することはできなかった。声質が違ったのである。

 それを恩師の松本美和子に指摘され、

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筆者

伊熊よし子

伊熊よし子(いくま・よしこ) 音楽ジャーナリスト・音楽評論家

東京音楽大学卒業。レコード会社勤務、ピアノ専門誌「ショパン」編集長を経て、1989年フリーに。クラシック音楽をより幅広い人々に聴いてほしいとの考えから、音楽専門誌だけでなく、新聞、一般誌、情報誌、WEBなどにも記事を執筆。アーティストのインタビューの仕事も多い。近著に『35人の演奏家が語るクラシックの極意』(学研プラス)。その他、『クラシック貴人変人』(エー・ジー出版)、『北欧の音の詩人 グリーグを愛す』(ショパン)、『図説 ショパン〈ふくろうの本〉』(河出書房新社)、『伊熊よし子のおいしい音楽案内―パリに魅せられ、グラナダに酔う』(PHP新書)、『クラシックはおいしい アーティスト・レシピ』(芸術新聞社)、『たどりつく力 フジコ・ヘミング』(幻冬舎)など著書多数。http://yoshikoikuma.jp/

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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