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『シチリアーノ 裏切りの美学』――既視感なき異形のマフィア映画

藤崎康 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

マフィアの<法/掟>より、国家の<法>

 さて、『シチリアーノ』の物語を大きく動かすのは、コルレオーネ派に対するブシェッタの反撃や報復ではない。それは意外にも、1984年にブラジルで逮捕されイタリアに引き渡されたブシェッタが、マフィア組織(コーザ・ノストラ)の“血の掟”に背き、国家に情報提供をすること、すなわち、イタリア当局と司法取引をすることによってであるが、この展開にこそ、『シチリアーノ』の既視感のなさ、つまり従来のマフィア映画の枠を大胆に壊す斬新さがある(マフィアの“血の掟”とは、組織についての情報を外部に漏らすことを固く禁じる、守秘義務のようなもの)。

 ブシェッタはつまり、マフィアの<法/掟>より、国家の<法>に従うことを選択するわけだ。むろんそれは、マフィアにとっては“血の掟”を破る裏切り行為(密告)だが、

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筆者

藤崎康

藤崎康(ふじさき・こう) 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

東京都生まれ。映画評論家、文芸評論家。1983年、慶応義塾大学フランス文学科大学院博士課程修了。著書に『戦争の映画史――恐怖と快楽のフィルム学』(朝日選書)など。現在『クロード・シャブロル論』(仮題)を準備中。熱狂的なスロージョガ―、かつ草テニスプレーヤー。わが人生のべスト3(順不同)は邦画が、山中貞雄『丹下左膳余話 百万両の壺』、江崎実生『逢いたくて逢いたくて』、黒沢清『叫』、洋画がジョン・フォード『長い灰色の線』、クロード・シャブロル『野獣死すべし』、シルベスター・スタローン『ランボー 最後の戦場』(いずれも順不同)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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