政権の長期化が招いた国民心理の2つの変化
2020年09月16日
安倍首相の辞任に伴う自民党総裁選で、菅義偉官房長官が勝利し、次期総理大臣になることが決定しました。既に世論でも人気を博していることから、内閣支持率もかなり高い数字が出ると予想されます。
新内閣の具体的な政策や政局の話はそれぞれの専門家にお任せするとして、今回注目したいのは世論の動きです。「次の総裁」としてあまり注目されてこなかった菅氏は、安倍首相が辞任を表明して後継者として「認知」されると、支持率がうなぎ登りになりました。さらに、主要5派閥からの支持を受けて勝利が決定的になると、石破氏を抑えて人気1位に躍り出るという大逆転現象が起こったのです。
実際、9月2日、3日に朝日新聞が行った世論調査でも、次期首相にふさわしい人物として菅義偉官房長官が38%で最も多く、石破茂・自民党元幹事長が25%と続いていました。6月の時点では、石破氏がトップで31%、菅氏は3%でしたから、およそ13倍に支持率が膨れ上がったかたちです。石破氏支持は6%も減少していることから、石破氏から菅氏に急遽鞍替えした人も一定数いたことが考えられます。
こういう現象を見ると、派閥の領袖たちで決めた人物をただ追認したようにしか思えない人々が相当数いるようで、「民主主義を担うだけの政治リテラシーを有していないのでは」と疑ってしまうところですが、なぜ彼らは菅氏へと雪崩を打ったのでしょうか?
仮に国会議員であれば、勝ち馬に乗るためにこのような雪崩行動に出ることも頷けますが、国民は早めに支持を表明したところで、何かの恩恵にあずかるわけではありません。派閥の支持で菅氏の当選が決定的との報が流れるまでは、メディアの(総裁候補としての)出演も石破氏のほうが多く、マスメディアが誘導したという見方も誤りでしょう。
考えられることとしては、権威主義的な行動のように思います。以前の記事、「リベラルな若者が政権を支持するネジレの謎を追う」では、若者の価値観は「日本会議」のような保守的思想とは対極にある“リベラル化”が進んでいるのに、安倍首相という「日本会議」的な思想を持つ保守的なリーダーを抵抗なく受け入れてしまうことに対して、「権威ファースト」だと指摘しました。
つまり、たとえ自身の価値観や意見と異なっていたとしても、権威者が
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