2020年09月18日
コロナ禍の影響でディズニー製作の映画『ムーラン』は米国や日本を含む多くの国で配信での公開になったが、この映画の最後のクレジットをめぐってアメリカや香港で抗議運動が起きているニュースが流れている。クレジットの謝辞に新疆ウイグル自治区の政府機関がいくつも書かれていることが問題だという。新疆ウイグル自治区では少数民族のウイグル人やカザフ人に対して強制収容などの人権侵害が起きており、そこに謝辞とはとんでもないということらしい。
もともと去年(2019年)の8月に『ムーラン』の主演女優リウ・イーフェイがSNSで「香港警察を支持する」とつぶやいてから、この映画をボイコットする動きは起きていた。それでも今年の3月に世界公開するはずで、日本でも今年の初めから映画館で予告編を流していた。それがコロナ禍で公開が9月になり、多くの国で「ディズニー・プラス(Disney+)」での配信のみとなった。ところが配信した映画を見た人々からは今度はクレジットに批判が上がったのだから、よほど運の悪い映画といえよう。
日本から見ていると、最近目立つ「中国によるハリウッド支配」の一つのように見える。大連万達グループは2012年に米国の映画館チェーンAMCを買収し、2016年には『パシフィック・リム』(2013)や『ジュラシック・ワールド』(2015)などを製作するレジェンダリー・ピクチャーズを買収している。確かに『パシフィック・リム』の続編『パシフィック・リム:アップライジング』(2018)では菊地凛子演じる森マコは早々に死に、中国のシャオ産業が大活躍するので、そういう印象を与える。
そうでなくても、『ゼログラビティ』(2013、配給:ワーナー・ブラザーズ)で最後にライアン(サンドラ・ブロック)は中国の宇宙船「神舟」で地球に帰還するし、『オデッセイ』(2015、配給:20世紀フォックス)ではNASAを助けるのは中国国家航天局だ。最近だと『トップガン』(1986)の続編『トップガン マーヴェリック』(配給:パラマウント、コロナ禍で今夏公開予定が来年に延期)の予告編で、トム・クルーズが着るジャンパーの背中の日本と台湾の旗が別のデザインに変わったことが話題になっている。
中国への「忖度」がハリウッド大手すべてに蔓延している感じがするが、一番大きな理由は
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