前田和男(まえだ・かずお) 翻訳家・ノンフィクション作家
1947年生まれ。東京大学農学部卒。翻訳家・ノンフィクション作家。著作に『選挙参謀』(太田出版)『民主党政権への伏流』(ポット出版)『男はなぜ化粧をしたがるのか』(集英社新書)『足元の革命』(新潮新書)、訳書にI・ベルイマン『ある結婚の風景』(ヘラルド出版)T・イーグルトン『悪とはなにか』(ビジネス社)など多数。路上観察学会事務局をつとめる。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
【28】美空ひばり「一本の鉛筆」
美空ひばりの心層深くに刻まれた幼児期の〝反戦の想い〟は、長じても消えることはなかった。
敗戦から10年の1955(昭和30)年、新生日本を象徴する新星のごとく現われた女性歌手によって初代「三人娘」が結成される。その一人は1949(昭和24)年に12歳でデビュー、「悲しき口笛」で大ヒットを飛ばしていきなりトップスターの座を手に入れた美空ひばり、残りの二人は、それぞれデビューが52年「テネシーワルツ」の江利チエミ、53年の「思いでのワルツ」の雪村いづみ。ともに18歳の同い年であった。
結成発表をうけて、三人娘たちに「今何が一番欲しいか」の質問が投げられた。
江利チエミの答えは「話している相手が本当は何を考えているかということを見抜ける目玉が欲しい」
雪村いづみの答えは「天女の羽衣のようなものがあったら、それでこのきたない世の中からおさらばして一人でフワッと広い空を飛んでいきたいわ」
これに対して、ひばりの答えは「この世界から
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