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伝統芸能の裏側に深刻なコロナショック

唯一の能装束専門店も一時注文ゼロに、伝承の危機を避けるには

田村民子 伝統芸能の道具ラボ主宰

伝統芸能の裏側の苦境

 世界を一変させている新型コロナウイルスによるパンデミックは、日本の舞台芸術にも甚大な被害を与え続けている。上演ができない、公演を再開しても制約が多いなど厳しい状況が報じられているが、舞台を陰で支えている人々も苦境を強いられている。

 私は長年、能楽や歌舞伎、文楽など伝統芸能の裏方や、その公演に使うさまざまな「道具」を作る職人たちを取材、調査してきた。その現場でもコロナ禍は深刻である。伝統芸能の上演に不可欠な道具類を安定して供給する「ものづくり」の場の窮地は、文化の伝承の危機に直結する。だが、観客から直接見えにくい分野であるため、残念ながら、なかなか多くの人の関心が向かないのが現状だ。

 コロナ禍で、舞台芸術に対してさまざまな助成もあるが、その対象は上演団体や実演者が中心で、それを支える職人が利用できる制度はほとんどない。応募が可能であっても、申請が難しいものばかりだった。幾人かの職人にたずねた範囲だが、実際に利用できたのは中小企業の持続化給付金(経済産業省)、雇用調整助成金(厚生労働省)だけ、というのがほとんどだった。

 こうした伝統芸能の裏側を、能と狂言のコスチュームである「装束(しょうぞく)」の製作を例に報告する。

(写真はいずれも、京都市上京区の「佐々木能衣装」で筆者撮影)

拡大京都「佐々木能衣装」が製作した唐織の装束


筆者

田村民子

田村民子(たむら・たみこ) 伝統芸能の道具ラボ主宰

1969年、広島市生まれ。能楽や歌舞伎、文楽などの伝統芸能の裏方、職人を主なフィールドとして取材、調査を行う。2009年より、製作ルートの途絶えた道具を復元する活動「伝統芸能の道具ラボ」を主宰。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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