「女性はいくらでも嘘をつく」を否定しない自民党
2020年10月01日
自民党内の性暴力被害対策の予算などを議論する会合に出席した杉田水脈衆議院議員が、性暴力被害に関連して、「女性はいくらでも嘘をつく」と発言したことに対し、大きな批判が噴出しています。
杉田氏本人や事務所は発言自体を否定しているものの、報道によると複数の関係者が杉田氏から発言があったと証言しているようです。言った言わない問題になっており、断定的なことは言えませんが、もし事実であるならばゆゆしき発言です。
ところが、これに関して、自民党内から批判的な声はあまり上がっていないようです。同じ細田派(清和政策研究会)の橋本聖子男女共同参画大臣が唯一、「努力されている方を踏みにじるような発言であり、非常に残念だ」と公式に発言したほか、下村博文政調会長が杉田氏に注意し、石破茂氏が本人と党に説明を求めていますが、それ以外目立った動きはありません。
「本人が否定しており、事実関係が分からない段階では何も言えない」という議員もいるようですが、そうであれば橋本氏が批判したことと整合性がつきません。橋本氏の発言は「ガス抜き」という見方もありますが、党内の動きが鈍いのは事実でしょう。
あらゆるところから批判があってしかるべきですが、とりわけ女性初の総理大臣を目指すと公言してきた野田聖子氏や稲田朋美氏が(2020年9月30日時点で)沈黙しているのは、非常に残念なことです。
杉田議員の発言は、性暴力の被害者に留まらず、女性政治家の発言の信用を失わせる効果もあります。ここでもし杉田議員の発言を否定しなければ、「杉田議員の発言を何も批判していないというのは、同じ女性であるこの人の発言も嘘ではないのか」という見方をされても仕方がないからです。
また、「女性がいくらでも嘘をつく」とは思っていなくとも、「男性よりも女性のほうが嘘をつく」という偏見をいまだに抱えている人は少なくありません。そのような社会の偏見も、ジェンダー平等な人事登用を阻む“ガラスの天井”の一つであり、それを打ち破らなければ女性初の総理大臣の誕生は難しいままでしょう。
仮に運よく総理大臣になれたとしても、そのような“ガラスの天井”を率先して粉砕し、次の世代から後継者が続々と生まれるような土壌を作れない限り、形だけの女性総理に終わってしまう可能性は十分あります。
初の女性総理には「男性中心社会の傀儡」ではなく、「新しい時代を切り開いた」と歴史に名を残すほどの活躍をして欲しいと望むからこそ、女性の足を引っ張るような発言には厳しく声を上げて欲しいものです。
杉田氏の発言は決して女性だけの問題ではありません。社会を構成する一員として、このような発言を社会で許容するか否かという意味においては、男性も当事者です。ですから、本来は性別に関係なく、あらゆる人から批判が起こらなければならないはずです。
それにもかかわらず、報道されているのは下村氏と石破氏のみで、自民党の男性議員からは批判の声が聞こえてきません(2020年9月30日現在)。自民党の男性国会議員は女性の約10倍ですから、女性一人の批判について、男性10人から声が上がらなければ、男性議員の意識が低いことの証左です。しかし2名からしか“批判”の声が聞こえてこないのは、彼らの「自浄能力」が低いからだと言わざるを得ません。
ちなみに、議員の男女比率が話題になると、必ず「性別よりも能力が大事」「能力で選ばれていれば問題ない」という反論が出ます。ですが、
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