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杉田水脈発言は、女性に対する新種で最悪のヘイトスピーチ

女性に被害を通報できなくさせる妄言

杉田聡 帯広畜産大学名誉教授(哲学・思想史)

杉田水脈議員の妄言

 杉田水脈(みお)議員が、自民党の合同会議の場で、「女性はいくらでもウソをつけますから」と発言したことが、この間、大きな問題になった(共同通信社2020年9月25日発信)。当人は当初発言を否定していたが、その後、実際に発言があった事実を認めて謝罪した(→公式ブログ9月26日付、10月1日付)。

 それは「改めて関係者から当時の私の発言を精査」した結果だというが、この間しようと思えばできたことをせずにすませていた安易さには、唖然とさせられる。

 

自民党の下村博文政調会長に発言を注意され、報道陣に囲まれる杉田水脈衆院議員=2020年9月30日自民党の下村博文政調会長に発言を注意され、報道陣に囲まれる杉田水脈衆院議員=2020年9月30日

 しかも今回のブログは、同上発言があったことを「確認」した、「お詫び」すると記すだけで、それ以上の説明もなければ、発言の撤回もない。しかも当初の発言趣旨からすれば、「女性」ということで実際に念頭におかれていたと判断される性犯罪被害者およびその支援者に対する、個別・具体的な「お詫び」もない。「嘘をつくのは性別にかぎらない〔=性別と関係がない〕」と記されているが、それは、「女性はいくらでもウソをつく」という言い分と矛盾しない。

 くわえて、氏の認識は根本的に間違っている。この点を、性犯罪被害者およびその支援者に関して、記しておきたい。

「支援センター」関係者へ向けたヘイトスピーチ

 杉田氏が「女性は……」発言を行った自民党の会議は、「男女共同参画」にかかわる来年度要求予算額に関するもので、問題の発言は、「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター」の増設方針を内閣府の官僚が説明した際に、発せられたものだという(毎日新聞9月26日発信)。

 同「センター」は47都道府県に設置されている。民間団体が担い、そこに政府が一部助成をする形で運営されているが、杉田氏は、民間が関わるよりも「警察の関与と連携」が必要だと主張しつつ、民間団体では「公金の不正利用などの問題」が起こる可能性があると主張した(→上記ブログ9月26日付)。

 この点は今回の「謝罪」ブログでは一切隠されているが、それは根拠のない言いがかりである。事実、同センターで公金の不正利用が実際にあったわけではない。ここで杉田氏が念頭においたのは、韓国の元慰安婦支援団体「正義記憶連帯」(旧挺対協)で最近発覚した事実にすぎない。

 にもかかわらず、「日本でも同じ問題が起こる可能性を懸念する声もあります」などと記して、あらぬ疑惑を、同センターに投げつけたのである。

 両者を結びつける契機となったのは、スタッフが(主に)女性であるという事実である。なるほど、少なくとも「正義記憶連帯」の代表者は女性であり、また同センターは、被害者が気がねなく相談できるように、一般に女性スタッフによって運営されている。

 だが、たかだかその程度の事実を媒介にして、同センターで不正がなされる可能性があるなどと主張するとすれば、それは民間団体に対する新種のヘイトスピーチであり、

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