1982年『つか版・忠臣蔵』てんまつ記④
2020年10月04日
1982年12月31日にテレビ東京で放送された『つか版・忠臣蔵』をめぐるシリーズの4回目です。
第1回 つかこうへいが掲げた「打倒・紅白」の旗印
第2回 つかこうへいが何度も構想した「非・義士」の物語
第3回 つかこうへい作・演出のドラマが動き出す
しかしここであえてその名を出すのは、高野嗣郎という人間が、つかこうへいが世に出て行く上で、平田満や風間杜夫などとは別の意味で、必要不可欠な存在だったからだ。何よりつかの執筆活動において、高野の果たした役割は大きい。
『劇団つかこうへい事務所』時代、つかの初めての小説『熱海殺人事件』以降、すべての小説、エッセイなどの仕事に関して、僕が加わる前から、つかのそばには絶えず高野がいて、その執筆をアシストした。それがどのように行われたかは、『つかこうへい正伝 1968ー1982』で詳しく書いたはずだ。
劇団解散後、僕が自分の芝居を始めて、つかの原稿仕事を手伝わなくなってからも、高野はほぼ10年以上、テレビ・舞台などの俳優の仕事と並行して、雑誌のライターなどもこなしながら、つかに請われ、そのいくつかの作品でたびたび助手を務めた。高野が主人公を演じる(?)小説『ハゲデブ殺人事件』などは、そんな彼に対する、つかこうへいなりの返礼だと僕は思っている。
酒が過ぎるとか、生活がとことんだらしないとか、自分勝手にもほどがあるとか、大人として社会生活を営む上での、高野自身にあった問題はいくつも挙げられるし、仲間として何度もそんな部分を諌めてきた。今でも何年かに一度、会った折に冗談めかして責めたりもする。ただ高野はいたって醒めていて、後悔などないようだ。
ただ、僕が現在の仕事をそれなりの年月、続ける中で、「ライター」なる人々と関わることも多かったが、単純に高野以上の〝筆力〟の持ち主に出会ったことはない。これは僕の正直な気持ちだ。
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