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『ビリー・エリオット』はリモートレッスンでも進化する

プロデューサーがつづる公演の歩み②

梶山裕三 ホリプロ ファクトリー部副部長

 2020年秋、コロナ禍を乗り越えて開幕したミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』は東京公演を無事に終え、大阪へ向かった。その歩みをプロデューサーが記す連載の2回目です。第1回は、こちら

重なる上演中止、ビリーもステイホーム

ビリー役の(左から)川口調、利田太一、中村海琉(かいる)、渡部出日寿(でにす)

 新型コロナウイルスの猛威はおさまらず、2月に上演したホリプロ主催の舞台『ねじまき鳥クロニクル』と、制作を請け負う彩の国シェイクスピアシリーズ第35弾『ヘンリー八世』が、公演の途中で中止となった。3月下旬、初日を遅らせて開幕したミュージカル『サンセット大通り』も千秋楽前に公演中止となってしまう。

 そんな状況下でも、オーディションで選ばれたビリー役の少年たち4人は練習を続け、3月23日からは本格的なレッスンを開始した。ミュージカル『ビリー・エリオット』を開幕するためには、この日から数えて16週間かかるため、1日も無駄にできないのだ。

 万全の感染予防対策を施し、緊張感に包まれてのスタートとなった。本来、この日には、ロンドンから演出スタッフが合流する予定だったが、日本以上に感染が広がるロンドンから来日できるはずもなく、演出補のサイモン・ポラード氏はリモートで参加し、レッスンはスタートする。

 しかし4月に緊急事態宣言が発出されると、4人のビリーが集まってのレッスンの継続は難しくなり、全員がステイホームとなった。

ロンドンと結び、自宅で続くリモートレッスン

 ステイホームの初日、私は会社で4台のiPadと4台のWi-Fiルーターを借り、丸一日かけてビリーたちの自宅に届けて回った。少しでもリモートでレッスンを積み重ね、1日でも早く開幕を迎えたいと思ったのだ。

 翌日から、自宅でのリモートレッスンが始まる。家の中ではスペースに限りがあるため、バレエやタップを踊るのは難しい。ステイホーム中は芝居のレッスンが中心となった。

 サイモンが住むロンドンは日本と8時間の時差があるため、向こうが朝になる夕方にレッスンが組まれた。こちらが夕方4時のとき、ロンドンでは朝8時だ。レッスンの時間になると、目を覚ましたばかりのサイモンが画面に登場するのがお決まりだった。

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