メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

仏教と社会の間に広がるズレの正体は何か

[1]お寺の数はコンビニより多いのだが……

薄井秀夫 (株)寺院デザイン代表取締役

存在感の無いお寺

 仏教は約2500年前、お釈迦さまが説いた教えをもとにした宗教である。ちなみに『広辞苑』で「仏教」の項をひくと、「①仏陀の説いた教え。教典。②世界的大宗教の一。(後略)」とある。

 そして日本は仏教国である。

 なにしろ全葬儀の87パーセントを仏教式で行っている国である(第11回『葬儀についてのアンケート調査』日本消費者協会/2017年)。文化庁の『宗教年鑑』(令和元年版)では、仏教徒は約8434万人とあり、日本の人口1億2593万人の約67パーセントが仏教徒という計算になる。

 また国内には、実にたくさんの寺院がある。『宗教年鑑』によると、国内のお寺の数は、7万4206ヶ寺である。

 地域の社会インフラとして重要な役割をしてきた郵便局が2万3839局(2020年8月/日本郵便株式会社)、小学校が1万9526校(令和2年度/文部科学省学校基本調査)であることを考えると、その数がいかに多いかがわかる。コンビニエンスストアですら、5万5841店である(2020年8月/日本フランチャイズチェーン協会)。

 それだけの数のお寺が、地域社会に組み込まれているということだ。日本の社会においては、最も充実した社会インフラのひとつであると言えるだろう。

a_text/Shutterstock.com拡大a_text/Shutterstock.com

 しかしその数の多さに比べて、お寺の存在感は実に希薄だ。自分の生活圏の中に、お寺があることを思い出せる人がどれだけいるだろうか。郵便局やコンビニより数が多いはずなのに、その存在にすら気づかれていないのがお寺なのだ。

 そしてどのくらいの人が、仏教徒であるという自覚を持っているだろうか。どのくらいの人が、仏教の教えについて知っているだろうか。おそらく、どちらも1割には満たないだろう。

 まして普通の生活者にとっての仏教は、まずは葬儀や法事などの死者供養、ついで京都や奈良などでの観光、あとは初詣や祈祷といったところである。少なくとも『広辞苑』が言うような「仏陀の説いた教え。教典」の仏教は、ほとんど根付いていない。『広辞苑』的な仏教と現実の仏教は、かなり異なる存在なのである。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

薄井秀夫

薄井秀夫(うすい・ひでお) (株)寺院デザイン代表取締役

1966年生まれ。東北大学文学部卒業(宗教学専攻)。中外日報社、鎌倉新書を経て、2007年、寺の運営コンサルティング会社「寺院デザイン」を設立。著書に『葬祭業界で働く』(共著、ぺりかん社)、 『10年後のお寺をデザインする――寺院仏教のススメ』(鎌倉新書)、『人の集まるお寺のつくり方――檀家の帰属意識をどう高めるか、新しい人々をどう惹きつけるか』(鎌倉新書)など。noteにてマガジン「葬式仏教の研究」を連載中。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです