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草彅剛主演『ミッドナイトスワン』は「SMAP育ての親」飯島三智の逆襲

ジャニーズ事務所にできなくて、退所したらできること

矢部万紀子 コラムニスト

 映画『ミッドナイトスワン』を、都心にあるTOHOシネマズで見た。時々のぞくSNSの世界で大絶賛されていた。主演の草彅剛さんが、トランスジェンダーの役を演じているという。平日、正午過ぎからの上映だったが、一つ空きの座席はかなり埋まっていた。

 すごく良い調子で展開していった。新宿のショーパブで働く凪沙(草彅剛)が、母親から虐待されてきた中学生の一果(服部樹咲)を預かる。初対面で凪沙は言う。「好きであんた、預かるわけじゃないんだから。言っとくけど、私、子ども嫌いなの」。

 草彅さんの演技から、凪沙は己を律して生きてきた優しい人なのだとわかる。トレンチコートにピンヒール、大きなサングラスで新宿の裏通りを闊歩する凪沙が、初めて一果を抱きしめるシーンが秀逸だった。

 リストカットするかのように、自分の腕を噛む一果。その傷跡を見つけ、抱きしめる。そして、こう言う。「うちらみたいなんは、ずっと一人で生きていかんといけんのじゃ。強うならんと、いかんで」。

『ミッドナイトスワン』の公式サイトより拡大『ミッドナイトスワン』の公式サイトより

 世の中の真ん中にいない者同士。そこに一果のバレエ友だちであるお金持ちの娘・りん(上野鈴華)が加わり、人は孤独なのだという当たり前のことが心に染みる。

 後半からは凪沙の「母性」が前面に出てくる。評論家の芝山幹郎さんはパンフレットの中で「母性に対する急激な接近はやや強引な気もするが、これは自分のためというより、一果を思う気持ちがつんのめってしまったためだろう」と書いていた。母性ゆえの凪沙の決断、決断の末の結末が描かれる。正直に書くなら、どちらにも違和感が残った。

 が、この話はこれ以上、深入りしない。草彅さんの熱演は間違いなく、違和感も含め、いろいろな気持ちを呼び起こす映画だった。何より、今回の主題は別にあるのだ。

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筆者

矢部万紀子

矢部万紀子(やべ・まきこ) コラムニスト

1961年生まれ。83年、朝日新聞社に入社。宇都宮支局、学芸部を経て、週刊誌「アエラ」の創刊メンバーに。その後、経済部、「週刊朝日」などで記者をし、「週刊朝日」副編集長、「アエラ」編集長代理、書籍編集部長などをつとめる。「週刊朝日」時代に担当したコラムが松本人志著『遺書』『松本』となり、ミリオンセラーになる。2011年4月、いきいき株式会社(現「株式会社ハルメク」)に入社、同年6月から2017年7月まで、50代からの女性のための月刊生活情報誌「いきいき」(現「ハルメク」)編集長をつとめた後、退社、フリーランスに。著書に『美智子さまという奇跡』(幻冬舎新書)、『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』(ちくま新書)。最新刊に『雅子さまの笑顔――生きづらさを超えて』(幻冬舎新書)

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