児童・生徒を教師の性犯罪からいかに守るか
2020年10月14日
教師による児童・生徒に対する性犯罪が、たびたび報じられている。
例えば1990年度に同上の理由で懲戒免職になった公立小中高校の教師は3人だったが、2012年度には119人、2018年度には163人に達している(朝日新聞2020年9月29日付;池谷孝司『スクールセクハラ――なぜ教師のわいせつ犯罪は繰り返されるのか』幻冬舎文庫、no.36〔本書は電子書籍のため一定字数ごとに付された「no.」を記す、以下同じ〕)。
犯罪数が増加したというより、学校・教委が当然の対応をとるようになった結果であろうが、いずれにせよ子どもの生涯にわたる重大な後遺症を思うと、これは深刻な事態である。
しかも性犯罪は暗数が多いことが知られており、実数ははるかに大きいと考えられる。一人の性犯罪者が生涯に生む被害者は平均380人だという研究があるが、小児性犯罪者の場合、被害者数はその3倍にはなるという、加害当事者の衝撃的な発言が伝えられている(斉藤章佳『「小児性愛」という病――それは、愛ではない』ブックマン社、no.886)。
これは、小児性犯罪の発覚しにくさを示している。犯罪者は、被害者を手なずけ、言いくるめ、口止めし、犯行が露見しないよう周到に行動する。
こうした深刻な事態が明らかになっているだけに、教師を含む各種指導者のうちに潜在する小児性犯罪者の問題に、真剣に取り組まなければならない。
そうしたなか、小中高生らの保護者がつくる「全国学校ハラスメント被害者連絡会」は、9月末、「わいせつ行為」(小児性犯罪)によって懲戒免職となった教師に対して「免許を再交付しないように求める、約5万4千人分の署名」を文科省に提出した(同上朝日)。
懲戒免職となって免許を失っても、3年後には再交付が受けられる現行法の問題性は、政府自身も自覚してはいた。この点に踏みこむ可能性を、2020年6月に公表された「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」は示唆していたが(10頁、以下「強化方針」)、同連絡会はこの方針を後押しすべく署名活動に取り組んだのであろう。
学校での性犯罪は悪質の極みである。それは教師/児童・生徒間の絶対的な権力関係を利用し、児童・生徒の知識・経験上の未熟さを悪用し(中高生でも教師の理不尽な指示に逆らえないことが多い)、「教育」機関たる学校に見られる独特の構造から問題は発覚しにくく、かつ管理者が問題を隠蔽することも多い(池谷、no.2529)。
特に小児に性的指向をもつ者は、
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