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檀家制度には可能性がある

[3]風通しのいい組織にして再構築を

薄井秀夫 (株)寺院デザイン代表取締役

離檀料の噂

 檀家がお寺とつきあう上で、心理的なプレッシャーを感じることは少なくない。中でも、檀家を辞めるとお寺に伝えることへのプレッシャーは並大抵のものではない。

 巷では、檀家を辞める時は、お寺に離檀料を支払わなければならないと言われている。檀家を辞めるためにお寺に支払うお金ということだ。長年、お寺にお世話になった御礼の意味を込めて支払うものということになっている。

 インターネットで検索すると、仏事のマナーに関する情報サイトなどでは、離檀料をめぐってお寺と揉めたなどというエピソードがいくつも出てくる。あるいは離檀料の相場はこのくらいだという情報も出てくる。そして法的には支払う義務は無いが、感謝の気持ちとして置いてくるのが筋だということが書かれている。

 「お寺にお世話になったことへの御礼」と言うけれども、個人的に言わせてもらえれば、世話になったのはお互い様だと思う。少なくとも経済的には、お寺のほうがお世話になっている。もし、檀家のことを檀那(スポンサー)だと思っているなら、お寺の方が「これまでお世話になりました」と言うのが筋ではないだろうか。

 まあ現実的には、そんなことを言ったらお寺と揉めるので、多少のお金を支払ってでも、波風立てずに辞めていこうという人が大部分であろう。

お寺の側が檀家制度を改革する必要がある Attila JANDI/Shutterstock.com拡大檀家制度をどう改革すればいいのか Attila JANDI/Shutterstock.com

 お寺の名誉のために書いておくが、高額の離檀料を請求するお寺はさほど多くはない。一切とらないお寺もある。一部のお寺が、高額の離檀料を請求することで、それがクローズアップされているだけである。

 ただそれが高額であろうと低額であろうと、辞めるのにお金が必要なことに納得している人はほとんどいない。

 この離檀料も、心理的なプレッシャーとなっているのは間違いない。檀家を辞めるというのは、そう簡単なことではないのだ。


筆者

薄井秀夫

薄井秀夫(うすい・ひでお) (株)寺院デザイン代表取締役

1966年生まれ。東北大学文学部卒業(宗教学専攻)。中外日報社、鎌倉新書を経て、2007年、寺の運営コンサルティング会社「寺院デザイン」を設立。著書に『葬祭業界で働く』(共著、ぺりかん社)、 『10年後のお寺をデザインする――寺院仏教のススメ』(鎌倉新書)、『人の集まるお寺のつくり方――檀家の帰属意識をどう高めるか、新しい人々をどう惹きつけるか』(鎌倉新書)など。noteにてマガジン「葬式仏教の研究」を連載中。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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