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つかこうへいドラマに集まった多彩な顔ぶれ

1982年『つか版・忠臣蔵』てんまつ記⑤

長谷川康夫 演出家・脚本家

現れた、つか好みのスター

拡大つかこうへい=1986年撮影
 千田スタジオでの稽古の最終日、プロデューサーの古田明に連れられ、準備稿の「出演者」の中にその名が載る、一人の俳優が顔を見せた。沖雅也である。

 『つか版・忠臣蔵』への出演は、かつて仕事をしたことのある古田の推薦によるもので、つかとはこれが初対面だった。このとき沖は、体調のこともあって仕事上のスランプが続き、半年ほど休養していたという。

拡大沖雅也はドラマ『太陽にほえろ!』の端正な刑事役でも人気を集めた。初登場した回の朝日新聞(1976年9月10日付け)の番組評
 「だったらオレにまかせろ。なんとかしてやる」と意気上がるのが、つかこうへいである。これはのちに、阿部寛と出会い、彼に『熱海殺人事件』を託すようになった経緯と、若干通ずるところがある。

 つかは、現れた沖雅也が放つ、長身で整った顔立ちの、いかにもスター然とした雰囲気がいたく気に入ったようだった。このとき、風間の宝井其角と対抗する近松門左衛門役はこいつで行ける――と確信したのだと思う。そうなると芝居など二の次で入れあげるだろうことは、予想がついた。

 そして一緒について来ていた沖の事務所の社長、日景忠男氏のキャラクターにも強い興味を持ち、目を輝かせたのが、僕にはわかった。

 そして翌日から、稽古はいよいよテレビ東京へと移る。

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筆者

長谷川康夫

長谷川康夫(はせがわ・やすお) 演出家・脚本家

1953年生まれ。早稲田大学在学中、劇団「暫」でつかこうへいと出会い、『いつも心に太陽を』『広島に原爆を落とす日』などのつか作品に出演する。「劇団つかこうへい事務所」解散後は、劇作家、演出家として活動。92年以降は仕事の中心を映画に移し、『亡国のイージス』(2005年)で日本アカデミー賞優秀脚本賞。近作に『起終点駅 ターミナル』(15年、脚本)、『あの頃、君を追いかけた』(18年、監督)、『空母いぶき』(19年、脚本)などがある。つかの評伝『つかこうへい正伝1968-1982』(15年、新潮社)で講談社ノンフィクション賞、新田次郎文学賞、AICT演劇評論賞を受賞した。20年6月に文庫化。

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