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『ビリー・エリオット』稽古場は緊張と工夫の連続

プロデューサーがつづる公演の歩み③

梶山裕三 ホリプロ ファクトリー部副部長

 コロナ禍による数々の困難を乗り越え開幕したミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』は、無事に10月17日までの東京公演を終え、10月30日からの大阪公演へ向かっています。その歩みをプロデューサーがつづる連載の3回目です。前回まではこちら、1回目2回目

前半中止、客席半分の「興行」に悩む

拡大『ビリー・エリオット』の舞台。手前中央がビリー役の渡部出日寿、その左がウィルキンソン先生役の柚希礼音=東京・赤坂ACTシアター、田中亜紀撮影

 緊急事態宣言が解除され、6月8日からレッスンを再開することに決めたものの、依然として劇場では客席の50%までしかお客さんを入れることが許されていなかった。前期の73公演をすべて中止にしていることに加え、さらに残りの公演の客席数が半分になっては興行として成立する見込みはない。

 しかし、1年以上レッスンを続けてきた少年たちの努力を思うと、経済的な理由だけで中止にするわけにはいかなかった。ステイホーム期間は、様々な思いが錯綜し、悶々とする毎日を送っていた。

 そんな中、舞台公演の再開を支援する「J-LODlive(ジェイロッドライブ)」という助成金が創出されるという話が耳に入る。日本の舞台芸術の魅力を世界に伝えることを目的に、映像を海外に配信する公演に対して助成をする国の事業だ。2020年2月以降、公演を中止した主催者(法人)が申請できる。コロナウイルスの感染が広がり始めてから、多くの公演を自主的に中止にしてきた演劇界が、会社やジャンルを越えて集まり、発足させた「緊急事態舞台芸術ネットワーク(Japan Performing Arts Solidarity Network)」の働きかけが実を結んだ制度だ。

 最大で総製作費の半分(限度額5000万円)まで国が助成するというかなり手厚い内容だったが、それでも興行を黒字化するには届かない。しかし、もし興行を中止にした場合の損失は、会社業績に影響を与えるほど大きなものになる。「ビリーを継続するには、この助成金を獲得するしか道はない」と信じ、無我夢中で申請をした。『ビリー』は海外の作品だが、日本で上演した舞台を収録した映像は一定時間内なら配信に使える。その素材を活かして制作した映像を海外へ配信すれば、日本の舞台芸術の力を世界にアピールするという制度の目的にかなうはずだ。

 2週間後、無事に申請は通った。だが、喜びもつかの間、この助成金は、感染予防対策を徹底したうえで、上演を実現させてはじめて受け取れることを思い出す。「何としてでも初日の幕をあけてみせる」と決意を新たにした。

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筆者

梶山裕三

梶山裕三(かじやま・ゆうぞう) ホリプロ ファクトリー部副部長

1978年名古屋市生まれ。早稲田大学在学中、ミュージカル研究会でオリジナルミュージカル創りに没頭し、卒業後は舞台制作者を志す。2001年吉本興業に入社。「よしもと新喜劇」の制作などを経験した後、06年ホリプロに入社。多くの舞台のプロデュースを手掛ける。近年は「日本から世界へ発信する」との目標を掲げてオリジナルミュージカルに取り組み、15年初演「デスノート THE MUSICAL」は、日本で大ヒットした後、韓国人キャストによる韓国公演も実現、ホリプロ作品として初の海外ライセンス上演を果たした。18年には黒澤明監督の代表作「生きる」を世界で初めてミュージカル化。20年10~11月に東京、富山、兵庫、福岡、愛知で再演される。

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