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『ビリー・エリオット』稽古場は緊張と工夫の連続

プロデューサーがつづる公演の歩み③

梶山裕三 ホリプロ ファクトリー部副部長

稽古場をいかに清潔に保つか

 再開して2週間は、ビリー4人だけのレッスンが続いた。海外からの入国許可はまだおりないため、海外チームの姿はそこにはない。指導を託された日本人チームが芝居の動き、振付、歌い方をまず教え、一通りできるようになるとそれを海外チームがリモートでチェックするという流れだ。

 初演から携わっているというものの、前回は海外チームが教えた内容を、補佐的に指導していく役割だった日本人チームにとって、この期間は相当なプレッシャーだったに違いない。しかし、全員が「海外チームが来日するまでなんとか自分たちができることをやろう」という思いで、見事な仕事をしてくださった。

拡大ビリー(利田太一)が成長した自分自身(オールダー・ビリー、大貫勇輔)と踊る幻想的な場面の稽古
 レッスン中は、子供たちに常にマスクを着用してもらった。ただし、激しいダンスをするときは、呼吸が苦しくなるため、周囲との距離を確認したうえで外してもらうようにした。

 2カ月ぶりに(リモートでは会っていたものの)再会したビリー達4人は、楽しくなってつい近づいてしゃべってしまう。そのつど「ディスタンス!」と注意をした。彼らには最後まで健康でいてもらわないと困るため、感染予防の自覚が身につくまで「すぐに手洗い!」「食事中はしゃべらない!」などと繰り返し言い続ける必要があった。

 子供たちのレッスンを進めながら、稽古場での感染予防ガイドラインをブラッシュアップしていく。

 実際に稽古場にいると、気になることが次々に出てきた。

 感染予防の基本的な考え方は「手洗い・うがいの徹底」と「三密を避ける」ことであったが、我々は「ウイルスを稽古場に持ち込ませないこと」にも重点を置いた。電車やバスを利用して稽古場に通う人の衣服にはウイルスが付着している可能性がある(と複数の記事に書いてあった)ので、全員に別室で着替えをしてから、稽古場に入ってもらった。ウイルスは靴底にも付着するため、稽古場に入るときは必ず靴を履き替え、稽古場の外にあるトイレに行くときには、面倒でも必ず再度外履きに履き替えてもらった。飛沫が多いトイレ内を歩いた靴で室内に入ることはウイルスを持ち込んでしまうリスクが高いからだ。

 いかに稽古場内を清潔に保つかを考え続けているうちに、我々が普段、いかに不衛生な毎日を送っていたかを思い知らされる。これらのルールは、コロナが収まった後も続いていくことになるかもしれない。

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筆者

梶山裕三

梶山裕三(かじやま・ゆうぞう) ホリプロ ファクトリー部副部長

1978年名古屋市生まれ。早稲田大学在学中、ミュージカル研究会でオリジナルミュージカル創りに没頭し、卒業後は舞台制作者を志す。2001年吉本興業に入社。「よしもと新喜劇」の制作などを経験した後、06年ホリプロに入社。多くの舞台のプロデュースを手掛ける。近年は「日本から世界へ発信する」との目標を掲げてオリジナルミュージカルに取り組み、15年初演「デスノート THE MUSICAL」は、日本で大ヒットした後、韓国人キャストによる韓国公演も実現、ホリプロ作品として初の海外ライセンス上演を果たした。18年には黒澤明監督の代表作「生きる」を世界で初めてミュージカル化。20年10~11月に東京、富山、兵庫、福岡、愛知で再演される。

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