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学術会議会員の任命拒否は、人事だからこそ、その理由を言わねばならない

三島憲一 大阪大学名誉教授(ドイツ哲学、現代ドイツ政治)

日本学術会議の第1回総会。科学を通じて日本の平和的復興と人類の福祉に貢献するとの声明を発表した=1949年1月20日拡大日本学術会議の第1回総会。科学を通じて日本の平和的復興と人類の福祉に貢献するとの声明を発表した=1949年1月20日

 1951年、日本学術会議が全国の研究者を対象に行ったアンケートに、過去十数年において「学問の自由」が最も実現されていたのはいつでしたか、といった問いがあった。この問いに対して「戦時中」という答えが一番多かったそうだ。このエピソードを紹介するのは、天文物理学者の池内了氏だ(『科学者と戦争』岩波新書)。

 たしかに戦時中は、自然科学の研究室に軍事目的のお金が大量に流れ込んでいた。1951年といえば戦後の混乱が少しは収まり、市民の多くが新しい民主主義を懸命に生き始めた頃だ。それなのに「学問の自由」の理解はこの程度だった。がっかりだ。好き勝手にお金が使える「自由」と、公権力からの「学問の自由」の法的保障とはまったく異なるのだが。

 お金が使える「自由」は、自由をめぐる議論では、むしろ「恣意」とか「勝手」と言うべきだろう。「自由」とは権利につながる言葉だ。

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筆者

三島憲一

三島憲一(みしま・けんいち) 大阪大学名誉教授(ドイツ哲学、現代ドイツ政治)

大阪大学名誉教授。博士。1942年生まれ。専攻はドイツ哲学、現代ドイツ政治の思想史的検討。著書に『ニーチェ以後 思想史の呪縛を超えて』『現代ドイツ 統一後の知的軌跡』『戦後ドイツ その知的歴史』、訳書にユルゲン・ハーバーマス『近代未完のプロジェクト』など。1987年、フィリップ・フランツ・フォン・ジーボルト賞受賞、2001年、オイゲン・ウント・イルゼ・ザイボルト賞受賞。