コロナ禍の影響で、相変わらず音楽関係者は苦境に立たされている。ライブハウスなどの“場”のみならず、今後どうするべきかという選択を強いられているのが、実際にステージに立つ存在、すなわちミュージシャンだ。
ただでさえ、この数年で音楽産業の構造は大きく変化した。ストリーミングの急速な浸透などの影響もあり、レコード会社と契約して作品をリリースするという“これまで当たり前だった手段”も成り立たなくなっている。
そのため多くのミュージシャンは、収入源としてのライヴに重きを置くようになった。ところがそんな矢先、コロナが“場”を奪ってしまったのだ。
だが、そんないまこそ、音楽で生きていくにあたっての“常識”を見なおす絶好のタイミングであるとも考えられる気がする。
たとえばその常識のひとつが、「音楽をやるなら、音楽だけで食っていくべきだ」というような主張だ。実際にはそれができずに辞めていく人も少なくないのだが、そういった理想論に引きずられる人は減ることがない。しかし、いまこそ考え方を改め、これからのミュージシャンのあり方について問いなおしてみるべきではないだろうか?
レコード会社と契約しなくても、仕事を持っていても、やり方次第で音楽を続けることはできるのだから。たとえばそのいい例が、1982年の結成以来、地元の名古屋で活動を続けているパンク・バンド、the 原爆オナニーズだ。
日本を代表するパンク・バンドである彼らの姿を追ったドキュメンタリー映画『JUST ANOTHER』(大石規湖監督)の公開に合わせ、いろいろな意味でエキセントリックなこのバンドについて、ヴォーカリストであるTAYLOWの言葉も交えながら書いてみたい。

『JUST ANOTHER』(大石規湖監督) ©2020 SPACE SHOWER FILMS
『JUST ANOTHER』予告編