多様な作品呼び寄せる「土着モダン」空間
ここで簡単にアトリエの歴史に触れておく。
1950年 アトリエ完成。以降、アトリエ公演の会場となる
1960年 ベケット『ゴドーを待ちながら』、イヨネスコ『犀(さい)』を上演
その後もウェスカー、アヌイ、ジロドゥ、オールビー、ジュネらの前衛的な作品を採り上げ、共感を呼ぶ

1960年代にアトリエで上演された前衛的な作品。㊧㊤ベケット『ゴドーを待ちながら』(安堂信也演出、60年)、㊨㊤イヨネスコ『犀』(荒川哲生演出、60年)、㊧㊦オールビー『動物園物語』(荒川哲生演出、62年)、㊨㊦アラバール『戦場のピクニック』(長岡輝子演出、65年)
1964年 前年のアトリエにおける真摯純粋な演劇活動とその業績により、第14回芸術選奨文部大臣賞
1971年 アトリエ改装、額縁舞台(プロセニアム・アーチ)を取り壊したことで新たな劇場空間が誕生
1972年 「シェイクスピア・フェスティバル」開催
1973年 つかこうへい、金杉忠男らの作品を「現代作家シリーズ」として上演
1974年 別役実『数字で書かれた物語』上演、以降、別役作品を連続上演
1977年 前年の活発な活動により「文学座」が第11回紀伊國屋演劇賞団体賞
1991年 前年の『グリークス』の企画・製作に対して「文学座アトリエの会」が第25回紀伊國屋演劇賞団体賞
2001年 アトリエ50周年記念公演『マイ シスター イン ディス ハウス』が第8回読売演劇大賞優秀作品賞。「50周年記念公演」の成果でアトリエの会が第1回倉林誠一郎記念賞の団体賞
2003年 前年の活発な活動により「文学座」が第37回紀伊國屋演劇団体賞
2013年 第20回読売演劇大賞で『NASZA KLASA』が最優秀作品賞、「文学座アトリエの会」が芸術栄誉賞
2019年 アトリエが新宿区の地域文化財に登録される
(「文学座ホームページ」より抜粋)

大きな反響を呼んだ「シェイクスピア・フェスティバル」の『ハムレット』(出口典雄演出、1972年)。江守徹(中央)が主演した
空間としてのアトリエの魅力は、何といってもその木の質感。床下に土の気配を感じさせる「英国チューダー様式」の洋館という、いわば土着モダン、和洋混在の両義性にある。このあたりが演目として多様な作品を呼び寄せる根拠のひとつなのかもしれない。