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平間壮一が『RENT』マーク役で出演/下

ニューヨークの若者たちを描くブロードウェイミュージカル オリジナル演出版で上演

大原薫 演劇ライター


平間壮一が『RENT』マーク役で出演/上

マークを演じていて難しいのは、答えがないこと

――映像作家であるマークは作品の冒頭からビデオカメラを回していますよね。マークにはみんなを記録するという役割があるのかなと思います。

 マークを演じていて難しいなと思うのは、答えがないんです。記録をした先に何がしたいか、普通は考えないといけないけれど、それを披露する場面もないし。「自分が撮りたい映像を撮る」と言いながら、その映像をどうにかするということは描かれていない。そこが自由がきくところでもあり、(演じていて)難しいところだなと思います。1幕ではマークはロジャーの世話をしているけれど、お世話した先に何があるかというと、何もないというか。

拡大平間壮一=岩田えり 撮影

――そうすると、マークは同じ『RENT』の登場人物でもエンジェルとはだいぶ違いますね。

 違いますね。エンジェルは「みんなを幸せにしたい」と思って、与えるだけ与えて、自分の命はなくなっていく役なんですが、マークはそうではない。善人のキャラクターでも悪人のキャラクターでもない。普通なんです。

――普通の人だけれど、物語の中心ですからね。

 それが面白いところですね。マークはストーリーテラーのような役割で、一回物語を止めて「この人たちはこうなります」と喋りますよね。でも、そうやって人のことばっかり気にしているうちに「じゃあ、あなたの人生は?」と聞かれたとき、「あ、僕、何もない」という感じなのかなって。ロジャーとミミ、コリンズとエンジェルのような恋愛もなくて、何もないんですよ、この人(笑)。「何もないって何だよ」と思いながら、今頑張っていますけど。

お客様と同じ気持ちでいられたら正解なのかも

拡大平間壮一=岩田えり 撮影

――その先には何かあるんでしょうか。

 どうなんですかねえ。お客様と同じ気持ちになれたら正解なのかなという気がしています。客席にマークが座っているという感覚でいられたらと思いますね。

――確かにそうかも。作中でマークが一番共感できるキャラクターのように思います。「ただ一つの曲を残したい」と願うHIVポジティブの元ボーカリスト、ロジャーとマークの二人が作者のジョナサン・ラーソン自身を投影したキャラクターだと言われていますよね。「自分が何者でもない」と感じている人にジョナサンがスポットを当てているところが興味深いですね。

 自分がマークに選ばれたのはそこなんだろうなと、勝手に思っていて。稽古中に全員が自己紹介するとなったとき、みんなは「自分はこうなっていきたいから、今は歌をやっています」とか明確な夢や希望をどんどん語っていくんですよ。「じゃあ、壮一、次は君の番ね」と言われたとき、何を言っていいのかわからなくなって、何も出てこなくて。「この舞台のオファーをいただきました」「はい、やります」と言って演じて、というのが何年も続いて。続いてくれているのは嬉しいことなんだけど、「じゃあ、お前自身は何なの」と言われたら、すごく困ってしまう。でも、こういうところが今、自分がマークに選ばれた理由なのかなと思いますね。

――今の平間さんだからこそ、巡り合うべくしてマークに巡り合ったのかも。

 そうだと思います。「自分はこれをやりたいのに」と頑なな思いでいて、何もかもうまく回らない時期があったけれど、今は自分が解き放たれている気がする。だから今、マークなのかなって。

◆公演情報◆
ミュージカル『RENT』
東京:2020年11月2日(月)~12月6日(日) 日比谷・シアタークリエ
愛知:12月11日(金)~12月12日(土) 愛知県芸術劇場 大ホール
公式ホームページ
[スタッフ]
脚本・作詞・音楽:ジョナサン・ラーソン
演出:マイケル・グライフ
[出演]
マーク:花村想太/平間壮一(Wキャスト)
ロジャー:堂珍嘉邦(CHEMISTRY) /甲斐翔真(Wキャスト)
ミミ:遥海/八木アリサ(Wキャスト)
コリンズ:加藤潤一/光永泰一朗(Wキャスト)
エンジェル:RIOSKE (COLOR CREATION) /上口耕平(Wキャスト)
モーリーン:フランク莉奈/鈴木瑛美子(Wキャスト)
ジョアンヌ:宮本美季
ベニー:SUNHEE/吉田広大(Wキャスト)
ICHI コリ伽路 奈良木浚赫 小熊綸 吉田華奈 吉原シュート
※ベニー役:SUNHEEは、11月20日以降の出演に向けて準備を行っておりますが、新型コロナウィルス感染拡大に伴う入国制限により来日が叶わずやむを得ず出演者が変更となる可能性があります。

〈平間壮一プロフィル〉
 2007年、舞台「FROGS」でデビュー。高度なダンススキルを武器に多くの演劇作品に出演。2015・2017年、ミュージカル「RENT」ではエンジェル役で出演。2017年、劇団☆新感線「髑髏城の七人~Season月《上弦の月》」では迫力あるアクションで観客を魅了。2018年の舞台「Indigo Tomato」ではサヴァン症候群の青年という難役で主演を務め、好評を集め翌年には再演も実現した。
公式ホームページ
公式twitter
公式instagram

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筆者

大原薫

大原薫(おおはら・かおる) 演劇ライター

演劇ライターとして雑誌やWEB、公演パンフレットなどで執筆する。心を震わせる作品との出会いを多くの方と共有できることが、何よりの喜び。ブロードウェー・ミュージカルに惹かれて毎年ニューヨークを訪れ、現地の熱気を日本に伝えている。

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