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『ビリー・エリオット』危機乗り越え、団結を強める

プロデューサーがつづる公演の歩み④

梶山裕三 ホリプロ ファクトリー部副部長

 東京公演を無事に終え、10月30日に大阪公演の初日を迎えるミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』。コロナ禍の中、キャストとスタッフが過ごした日々をプロデューサーがつづる連載の4回目です。これまでの原稿はこちら、1回目2回目3回目

出演者全員の群舞、タップの音に胸が熱く

 7月中旬に全キャストが集まってまもなく、フィナーレの稽古があった。

拡大フィナーレの稽古をする出演者たち
 『ビリー』には、物語が終わった後、通常のカーテンコールの前に、出演者が次々に登場し、全員でタップダンスを踏む壮大なフィナーレがある。観客は、俳優たちが力を振り絞って踊る群舞を最後に観て大満足で帰路につくことになるわけだ。

 稽古場で全員が一斉にタップを踏み、床を蹴る音が鳴り響いた瞬間、なんとも言えない感動を覚えた。大勢が一斉にダンスをするのを見たのが数カ月ぶりだったこともあるが、ダンスには純粋に人の心を打つ力があるんだと改めて感じた。先の見えないステイホーム期間を経て、いま「仕事ができている喜び」が俳優たちの表情から溢れ、より一層、観ている我々を熱くさせた。

 それまで少人数のなかで、1年以上レッスンを続けてきたビリーたちも、大人の俳優たちに囲まれてレッスンをしていくうちに、自分がこの舞台で主役を演じるという自覚が湧いてきたのか、徐々に顔つきが変わってきた。感染予防しながらのレッスンもすっかり身についている。大人の俳優たちも、日々成長していく子供たちの姿に刺激を受けているのがわかる。

 大人数の稽古になっても、海外チームのリモートによる指導はしっかりと機能していた。もし今年が初演だったら、この状況下で上演はできていなかっただろう。ビリーの細部にわたる膨大な演出意図をリモートで伝えることは、ほぼ不可能だからだ。

 今回の公演には、初演から参加し、作品の完成形を知るキャスト・スタッフが大勢参加してくださっている。リモートでは目が行き届かない部分を、彼らが自分たちの記憶で補い、海外チームの指示を理解して再演メンバーに伝えてくれたことが、作品のクオリティを確実にあげていた。

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筆者

梶山裕三

梶山裕三(かじやま・ゆうぞう) ホリプロ ファクトリー部副部長

1978年名古屋市生まれ。早稲田大学在学中、ミュージカル研究会でオリジナルミュージカル創りに没頭し、卒業後は舞台制作者を志す。2001年吉本興業に入社。「よしもと新喜劇」の制作などを経験した後、06年ホリプロに入社。多くの舞台のプロデュースを手掛ける。近年は「日本から世界へ発信する」との目標を掲げてオリジナルミュージカルに取り組み、15年初演「デスノート THE MUSICAL」は、日本で大ヒットした後、韓国人キャストによる韓国公演も実現、ホリプロ作品として初の海外ライセンス上演を果たした。18年には黒澤明監督の代表作「生きる」を世界で初めてミュージカル化。20年10~11月に東京、富山、兵庫、福岡、愛知で再演される。

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