プロデューサーがつづる公演の歩み⑤【完】
2020年10月31日
ミュージカル『ビリー・エリオット』はいくつもの困難を乗り越えながら、東京公演を無事終え、大阪へ向かいました。その歩みをプロデューサーが振り返る連載の最終回、いよいよビリーが劇場に入ります。
前回まではこちら、1回目、2回目、3回目、4回目。
そして公演期間中、楽屋に出入りできるのはPCR検査を受けた人間のみに限るというルールを作った。本番期間中も同様に、終演後のキャストとの面会も禁止とした。キャストのマネージャーや主催関係者なども、例外を認めなかった。
さらに、すべての楽屋を抗菌施工 し、外履きから内履きに履き替えるための靴箱を設置、大きな楽屋は1人ずつパーテーションで空間を仕切るなど、万全の態勢を整えた。
『ビリー』はオーケストラによる生演奏での上演だ。オーケストラピットで、指揮を兼ねるピアニストを含め9人のミュージシャンが演奏をする。ピアノやギターはマスクをつけながら演奏ができるが、トランペットやフルートはそうはいかない。オーケストラピット内の感染予防も大きな課題だった。いろいろと検証し、実験を重ねた結果、楽器の音質を損なわない材質で仕切りを作り、演奏者1人1人が完全に個室で演奏できるような仕切りを作った。ピット内はまるで8LDKのマンションのようになった。
ロンドン在住の照明スタッフ、音響スタッフもリモートで舞台稽古に参加してくれたが、通話アプリで伝えられる照明や音のクオリティには限界があった。しかし、初演を知る日本人スタッフが、自分たちの記憶と感覚を信じて、一つ一つのシーンを丁寧に作ってくれたので不安はなかった。
9月上旬、オーケストラが合流し、サウンドチェックが行われた。オーケストラの演奏とキャストの歌の音量のバランスを決める重要な時間だ。
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