井上威朗(いのうえ・たけお) 編集者
1971年生まれ。講談社で漫画雑誌、Web雑誌、選書、ノンフィクション書籍、科学書などの編集を経て、現在は漫画配信サービスの編集長。
※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです
「僕のスタイルが、野球4コマの進化形として受け入れられた」
――『野球大喜利 ザ・パッション こんなプロ野球はイヤだ8』、本当に面白く読ませていただきました。ユーザー参加型のこの企画、週刊「アサヒ芸能」とTwitterを連動させて、もう10年も続いているのですね。
カネシゲタカシ氏(以下カネシゲ) 野球大喜利っていうTwitterアカウント自体が、開設からもう10年になります。単行本もかれこれ8冊になりました。
――お題を作るところから、どんなことを考えてやっておられるんですか?
カネシゲ かつては毎日お題を出してたので、とにかく「お題かぶりしないこと」が一番のポイントになっています。
――どれだけのお題を出してきたのですか?
カネシゲ 結局、三千数百回といった数になりました。
――いや……すごいですね。
カネシゲ さすがに少しはお題を使いまわしたり、最近でも「実は2014年にも出したお題です」とか、そういうのもあったりするんですよ。ほんとはシンプルな、「こんな○○はイヤだ」みたいなのでいきたいんですが……。
――「こんな○○はイヤだ」というお題がいいんですか。
カネシゲ 大喜利の基本はやっぱり「こんな○○はイヤだ」なんですよ。だって「イヤだ」って語尾にしておけば、どんな回答も当てはまる。長いお題だと答えが限られてくることがあるんですが、たとえば「こんな代走はイヤだ」にしておけば、たいていのことは「イヤだ」になるんで。
――たしかに、答えやすいです。本書に「こんなスパイクはイヤだ」っていうお題がありますが、単に「すごく臭い」だけでも「イヤだ」で成り立つ。採用はされないでしょうが。
カネシゲ 昔のテレビ番組「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」に「たけしメモ」っていうコーナーがありまして、毎週ビートたけしさんが「こんな○○はイヤだ」っていうのを回答でどんどん出していって、読み上げながら「これはイヤですね~」っていうんですよ。
――「笑点」ではなくて「たけしメモ」が野球大喜利の原点だったんですね。
カネシゲ はい。ちなみにこの「たけしメモ」では、毎回のように「歯茎が長い」っていうボケが出てくるんですよ(笑)。
――大喜利のお題が思いつかなかったら「こんな○○はイヤだ」。答えが思いつかなかったら「歯茎が長い」でいける?
カネシゲ それはわかりませんが、「歯茎が長い」っていう回答はだいたいどんなボケにも当てはまるんですよ。たとえばさっきの「こんな代走はイヤだ」って言われて、「歯茎が長い」って言われたら成り立つなと(笑)。
――おお! 一瞬でできてしまった。たけしさんはTwitter大喜利スタイルの起源なのですね。
カネシゲ 「こんな○○はイヤだ」っていう言い方を広めたのはたけしさんだと思います。そこから(お笑い芸人の)鉄拳さんが「こんな○○は××だ」みたいな感じで、フリップ漫談みたいなことをされて、ひとつの基本形になったという感じですね。