ペリー荻野(ぺりー・おぎの) 時代劇研究家
1962年、愛知県生まれ。大学在学中よりラジオパーソナリティを務め、コラムを書き始める。時代劇主題歌オムニバスCD「ちょんまげ天国」のプロデュースや、「チョンマゲ愛好女子部」を立ち上げるなど時代劇関連の企画も手がける。著書に『テレビの荒野を歩いた人たち』『バトル式歴史偉人伝』(ともに新潮社)など多数。『時代劇を見れば、日本史はかなり理解できる(仮)』(共著、徳間書店)が刊行予定
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
登場人物の強い言葉、強敵を倒すカタルシスが歓迎されて
南座の舞台には、「鬼滅の刃」のキャラクターが等身大オリジナルイラストで立ち並ぶ。もともと歌舞伎には鬼退治をテーマにした作品があり、それは鬼と闘う「鬼滅の刃」と共通している。舞台上の「鬼滅」の登場人物は、主人公の竈門炭治郎が「坂田金時」、妹の禰豆子(ねずこ)が「渡辺綱」というように、鬼や蜘蛛の化け物退治をした歌舞伎の登場人物に扮しているのだ。
来場者は、まず花道を通って、舞台上のキャラクターと遭遇。もちろん舞台・館内とも撮影オッケー。劇場内を自由に撮影できることもすごいが、日本最古の歴史を持つ劇場の花道や舞台に気軽に立てちゃうことにドキドキだ。演劇や歌舞伎の取材が多い記者も「めったに上がれない花道」で自撮りしていた。
会場で見上げれば、ずらり並んだ赤い提灯、華やかな照明、「鬼滅」に欠かせない藤の花、展示スペースには「阿古屋」など艶やかな歌舞伎衣裳の数々……コロナ禍で長く閉ざされてきた劇場に明かりがともり、再び多くのファンを、それも今まで南座には縁がなかった若いファンも取り込んでにぎやかさを取り戻そうというこのパワーと解放感は、祭りのわくわくとつながっている。