登場人物の強い言葉、強敵を倒すカタルシスが歓迎されて
2020年11月11日
「鬼滅の刃」の勢いが止まらない。
原作コミックの累計発行部数は22巻で1億部を超え、先日公開された新作映画『劇場版 「鬼滅の刃」 無限列車編』は、日本映画史上最速で興行収入100億円を突破(公開24日で200億円超)。さまざまなコラボ企画もあり、コンビニのおにぎり、菓子、カップラーメン、「くら寿司」、スニーカー「瞬足」、複数の女性誌などなど。日本郵政はコラボ年賀状で、年賀状離れに歯止めをかけようという作戦らしい。
これほど幅広くコラボ商品がある作品も珍しい気がするが、映画を配給した東宝の株は高騰し、その経済効果は2000億円を超えるとの説もある。菅総理が国会の場で「鬼滅」用語を使って「全集中の呼吸で答弁させていただく」と発言したのもびっくりした。
そんな中、私は先日、京都南座で開催されている「『鬼滅の刃』×『京都南座 歌舞伎ノ舘』」展を取材した。そこで感じたのは、「鬼滅の刃」は、ブームとか大ヒットというより、「新しい日本の祭り」になっているということだ。
南座の舞台には、「鬼滅の刃」のキャラクターが等身大オリジナルイラストで立ち並ぶ。もともと歌舞伎には鬼退治をテーマにした作品があり、それは鬼と闘う「鬼滅の刃」と共通している。舞台上の「鬼滅」の登場人物は、主人公の竈門炭治郎が「坂田金時」、妹の禰豆子(ねずこ)が「渡辺綱」というように、鬼や蜘蛛の化け物退治をした歌舞伎の登場人物に扮しているのだ。
来場者は、まず花道を通って、舞台上のキャラクターと遭遇。もちろん舞台・館内とも撮影オッケー。劇場内を自由に撮影できることもすごいが、日本最古の歴史を持つ劇場の花道や舞台に気軽に立てちゃうことにドキドキだ。演劇や歌舞伎の取材が多い記者も「めったに上がれない花道」で自撮りしていた。
会場で見上げれば、ずらり並んだ赤い提灯、華やかな照明、「鬼滅」に欠かせない藤の花、展示スペースには「阿古屋」など艶やかな歌舞伎衣裳の数々……コロナ禍で長く閉ざされてきた劇場に明かりがともり、再び多くのファンを、それも今まで南座には縁がなかった若いファンも取り込んでにぎやかさを取り戻そうというこのパワーと解放感は、祭りのわくわくとつながっている。
なぜ、ダークファンタジーと分類される「鬼滅の刃」が日本の祭りになりえたのか。
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