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一路真輝インタビュー/下 『Op.110 ベートーヴェン「不滅の恋人」への手紙』

ウィーンは私の魂が求めている場所

橘涼香 演劇ライター


一路真輝インタビュー/上 

ベートーヴェンが偉大過ぎるとぼやいている偉大な音楽家たち

──死後ベートーヴェンの引き出しの中から発見された手紙に書き記された「不滅の恋人」とは誰なのか?という、音楽史の謎に迫っている作品でもありますが、一路さんはベートーヴェンの音楽の中で特に惹かれるものはありますか?

 非常にポピュラーなところなのですが、ピアノソナタ「月光」などは好きでよく聴いていました。でもベートーヴェンの大ファンですとか、常に好んで聞いているというほどではなかったのですが、このお話を頂いてからは、より積極的に聞くようになりましたし、色々な資料も読み込んでいく中で、ひとつの曲にまつわるエピソードがたくさん出てくるのがとても興味深くて。ベートーヴェンを知っていくと、自然に同時代の作曲家や、後に続いた作曲家のことも気になってくるので、今、クラシック音楽全般への興味もすごく湧いてきています。

拡大一路真輝=岩田えり 撮影〈スタイリスト:江島モモ /ヘアメイク:熊田美和子〉

──ベートーヴェンが偉大過ぎて、次の時代の作曲家たちが如何にその壁を越えるか?を苦しんだと言われていますが、その次の時代の作曲家がシューマン、ブラームス、リスト、ワーグナーと並んでいくと、凄い時代だなと思いますね。

 私も身近な作曲家の方が「音楽には五線紙しかなくて、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェンといった作曲家たちがその五線紙を使い切ってしまって、今や何もできないんだよ」とぼやいていらしたのを思い出しました。ですからベートーヴェンが偉大過ぎて、後々の作曲家たちもぼやいていたんだろうと思いますが(笑)、でもその方達もすごい曲をたくさん作られているので、ぼやいていてもどの人もすごいじゃないと(笑)。

台本からウィーンの情景が全て想像できる

拡大一路真輝=岩田えり 撮影

──天才同士の高度なぼやきですね(笑)。そんな人々が活躍した音楽の都ウィーンのお話も出ましたが、改めてウィーンの魅力については?

 ウィーンは私にとっては自分自身が生まれた故郷と、宝塚歌劇団時代を過ごした宝塚、その後の拠点となっている東京とが、大きな馴染みのある場所なのですが、もうひとつウィーンがその中に数えられるくらい、私にとって自分の魂が求めている場所です。そこに最近行くことができないので、今、すごく行きたいと思っています。

──今、海外に行くことが難しい時代になってしまっていますから。

 そうなんですよね。更に遡ってやはり子供を産んでからはなかなか行くことができないでいたのですが、それまでの10年間ほどは、年に1回か2回は必ず行っていたので、外国にいるにも関わらず良い意味で緊張感がない場所でした。ですから今回こういうお役を頂いて本を読んでいても、土地のことは全部想像できるので、10年間の経験がここに活かせるといいなと思っています。おそらく舞台の演出もそんなに写実的に絵がでることはないのでは?と思っていて。もちろん映像で出る可能性もあるのですが、でも作り込んだものではないだろうと思ったときに、自分の中での想像がどこよりも広がる場所がオーストリア・ウィーンなので、それはこの作品をさせて頂くにあたって良かったなと思っていることです。

──それも含めてやはり、この作品と一路さんとのご縁にはなみなみならぬものがあるんだなと感じます。

 そうですね。そもそもの小熊さんとの出会いや、その小熊さんからお声がけして頂いたことも含めてウィーンがつないでくれた縁なので、感謝しています。

◆公演情報◆
拡大『Op.110 ベートーヴェン「不滅の恋人」への手紙』
『Op.110ベートーヴェン「不滅の恋人」への手紙』
兵庫:2020年11月28日(土)~11月29日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
富山:2020年12月2日(水) 富山県民会館ホール
愛知:2020年12月5日(土) 東海市芸術劇場 大ホール
東京:12月11日(金)~12月26日(土) よみうり大手町ホール
公式ホームページ
[スタッフ]
原案:小熊節子
演出:栗山民也
脚本:木内宏昌
音楽・演奏:新垣隆
[出演]
一路真輝、田代万里生、神尾佑、前田亜季、安藤瞳、万里紗、春海四方、石田圭祐、久保酎吉
 
〈一路真輝プロフィル〉
 宝塚歌劇団トップスターとして『風と共に去りぬ』、『ベルサイユのばら』などの話題作に主演し、1996年日本初演となる『エリザベート』のトート役で退団。 同年に、東宝ミュージカル『王様と私』のアンナ役で女優としてのスタートを飾る。結婚・出産を経て、2010年3月にコンサート『live@クリエ』を行い、同年末から5年振りの再演となる『アンナ・カレーニナ』で本格的に舞台復帰する。以前にも増した熱い演技にミュージカル女優としての存在を新たにする。1996年第22回菊田一夫演劇賞、04年第12回読売演劇大賞優秀女優賞受賞。2016年第37回松尾芸能賞優秀賞受賞。
公式ホームページ

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筆者

橘涼香

橘涼香(たちばな・すずか) 演劇ライター

埼玉県生まれ。音楽大学ピアノ専攻出身でピアノ講師を務めながら、幼い頃からどっぷりハマっていた演劇愛を書き綴ったレビュー投稿が採用されたのをきっかけに演劇ライターに。途中今はなきパレット文庫の新人賞に引っかかり、小説書きに方向転換するも鬱病を発症して頓挫。長いブランクを経て社会復帰できたのは一重に演劇が、ライブの素晴らしさが力をくれた故。今はそんなライブ全般の楽しさ、素晴らしさを一人でも多くの方にお伝えしたい!との想いで公演レビュー、キャストインタビュー等を執筆している。

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