「女性を腹心に据える男性」というロールモデル
2020年11月13日
アメリカ大統領選挙で民主党のジョー・バイデン氏がトランプ大統領を破り、カマラ・ハリス氏が黒人女性として初の副大統領に就任することになりました。
その彼女の勝利スピーチが、バイデン氏の勝利宣言以上に大きな話題となっています。とりわけ、初の女性副大統領について述べた以下の部分は、会場からの拍手喝采もひときわ大きく、日本のインターネット上でも反響が大きかったように感じました(和訳は朝日新聞の記事より)。
私は初の女性副大統領になりますが、最後の女性副大統領にはならないでしょう。なぜなら今夜、ここが可能性に満ちあふれた国だということを、全ての少女たちが目の当たりにしているからです。
まさに歴史に残る名スピーチではないでしょうか。日本の副総理の口からは聞こえてこないような、人々に夢と希望を与えるような言葉です。4年間、多くのマイノリティーが差別と分断に苦しんだ時代が終わり、新しい時代が始まったのだという実感を持つことができる内容でした。
このように、ハリス氏のスピーチが注目されていることから、「今回の主役はバイデン氏ではなくハリス氏だ!」という見方もあります。ですが、バイデン氏の偉業も忘れてはなりません。
ハリス氏の演説でも、「ジョーが最も大きな障壁の一つを打ち破った」と表現していました。バイデン氏は、これまでの「男性の大統領が男性の副大統領を選ぶ」という構図とは異なり、アメリカの歴史上初めて「女性を副大統領に選んだ男性の大統領」になったわけです。
確かに、初の女性副大統領誕生に比べて地味なことかもしれませんが、これは非常に意義があることです。というのも、男女格差の最大の要因は、「男性が変わらないこと」にあるからです。だから、社会が変わるためには、「変えようとする女性」は当然のこと、「今までの構図を変えられる男性」の存在も欠かせません。バイデン氏はそこを変えたことにより、新しい時代の、最初に海に飛び込んだ“ファーストペンギン”になったわけです。
と言いつつも、この程度のことを偉業のように扱うことは、本来はおかしいと思います。
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