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 今年の東京国際映画祭はたぶん1985年の創設以来、最大の変革を見せたのではないか。なにせ、「コンペ」がなくなったのだから。もちろん、コロナ禍で海外から審査員が来日できないということはあったにしても、日本人を中心にするとか、オンラインで審査をするとか方法はあったはずだ。

 コンペがなくなっただけではない。これまで「コンペティション」「アジアの未来」「日本映画・スプラッシュ」と分かれていたのが、「TOKYOプレミア2020」に一本化してフラットになり、32作品が並んだ。さらにこれまで1カ月後に開催していた映画祭「東京フィルメックス」が同時期の開催になった。

 その結果を一言で言えば、ようやくまともな方向に向かう兆しが初めて見えたということではないだろうか。

東京国際映画祭で観客賞を受賞した『私をくいとめて』の大九明子監督(右から3人目)と、女優ののんさん(同2人目)=2020年11月9日

拡大東京国際映画祭で観客賞を受賞した『私をくいとめて』の大九明子監督(右から3人目)と、女優ののんさん(同2人目)=2020年11月9日

 東京国際映画祭は国際的には全く注目されず、同じアジアで後発の釜山国際映画祭にも明らかに追い越されていた。これについては「論座」でも2012年の5回連載「東京国際映画祭はどこがダメなのか」を始めとして、毎年この映画祭をレポートして批判を重ねてきた。しかしアニメ部門ができたり、日本映画新作部門やクラシック部門が加わったり(この2つは私が提案していた)などのマイナーチェンジはあったものの、基本路線は全く変わらなかった。


筆者

古賀太

古賀太(こが・ふとし) 日本大学芸術学部映画学科教授(映画史、映像/アートマネジメント)

1961年生まれ。国際交流基金勤務後、朝日新聞社の文化事業部企画委員や文化部記者を経て、2009年より日本大学芸術学部映画学科教授。専門は映画史と映画ビジネス。著書に『美術展の不都合な真実』(新潮新書)、『永遠の映画大国 イタリア名画120年史』(集英社新書)、訳書に『魔術師メリエス──映画の世紀を開いたわが祖父の生涯』(マドレーヌ・マルテット=メリエス著、フィルムアート社)など。個人ブログ「そして、人生も映画も続く」をほぼ毎日更新中。http://images2.cocolog-nifty.com/

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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