2020年11月17日
今年の東京国際映画祭はたぶん1985年の創設以来、最大の変革を見せたのではないか。なにせ、「コンペ」がなくなったのだから。もちろん、コロナ禍で海外から審査員が来日できないということはあったにしても、日本人を中心にするとか、オンラインで審査をするとか方法はあったはずだ。
コンペがなくなっただけではない。これまで「コンペティション」「アジアの未来」「日本映画・スプラッシュ」と分かれていたのが、「TOKYOプレミア2020」に一本化してフラットになり、32作品が並んだ。さらにこれまで1カ月後に開催していた映画祭「東京フィルメックス」が同時期の開催になった。
その結果を一言で言えば、ようやくまともな方向に向かう兆しが初めて見えたということではないだろうか。
東京国際映画祭は国際的には全く注目されず、同じアジアで後発の釜山国際映画祭にも明らかに追い越されていた。これについては「論座」でも2012年の5回連載「東京国際映画祭はどこがダメなのか」を始めとして、毎年この映画祭をレポートして批判を重ねてきた。しかしアニメ部門ができたり、日本映画新作部門やクラシック部門が加わったり(この2つは私が提案していた)などのマイナーチェンジはあったものの、基本路線は全く変わらなかった。
今回の抜本的な改革は、この9月まで国際交流基金の理事長だった安藤裕康氏のチェアマン就任が大きい。これまで長年映画界から出してきたトップが初めて外交官出身になった。外務省と国際交流基金の出身だから当然のごとく「国際性」を問題にする。
日本の国際映画祭でアジア部門がコンペと別にあるのは、まるでアジア映画が劣るようで特に昨今のアジア映画の隆盛からみたらおかしい。コンペのない釜山やトロントは国際的にもずいぶん盛り上がっている。朝日新聞のインタビューで安藤氏は是枝裕和監督にアドバイスを受けたことを語っているが、是枝監督はこれまで何度も映画祭のトップに提案書を出したが、聞く耳を持たなかったと述べている。
さて今回の「TOKYOプレミア2020」の32本はどうかと言えば、
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