鈴木理香子(すずき・りかこ) フリーライター
TVの番組製作会社勤務などを経て、フリーに。現在は、看護師向けの専門雑誌や企業の健康・医療情報サイトなどを中心に、健康・医療・福祉にかかわる記事を執筆
※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです
NPO法人ALS/MNDサポートセンターさくら会理事・川口有美子さんに聞く
――安楽死は反対という考えは以前から持っていたものですか。
川口 いえ、昔はむしろ賛成でした。べったり母の介護をしていたときは、死よりほかに母を楽にする方法はないと考え、どうしたら安らかに死なせられるか、その方法を探していたくらいです。当時は「安楽死」という言葉がとても甘美なものとして聞こえていましたし、「死ぬ権利」もあると思っていました。
のちに、そういう状態の私は母にとって一番の危険人物であり、私を母から離さないと母の命が危ないということが分かりました。私が母に手をかけないですんだのは、大勢の方の手助けがあったからです。
――気持ちが変わったのには、何かきっかけがあったのでしょうか。
川口 そうですね。一つは、合法化のための勉強をしていたら、安楽死ほど危ないものはないと分かったから。もう一つは、母の介護に公的介護制度を使えるようになって、私に時間ができたからです。母も「娘はキツいけど、ヘルパーはやさしい」と、ヘルパーさんにお願いするようになった。そこで私も母から解放されました。
解放されて母の様子を客観的に見ると、母はかわいそうな人には見えなかった。それで、自分の親に対して子が「死んだ方がマシ」と思うのは不遜で、それほどひどいことはないと気付いたんです。どんな状態でも母の命を否定せずに、私も一緒に生きようと決意しました。
――安楽死を肯定する人のなかには、「安楽死はいつでも死ねる手段なので、逆に死ぬことを止める役割がある」という人もいるようです。
川口 ALSの患者さんもよく言います。「安楽死が合法化されたら、安心して生きていける」と。でも、その考えは危険なのではないかと思っています。
――危険、ですか?
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