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「エール」の主役は、歌の力。それがわかっているドラマだった

矢部万紀子 コラムニスト

9月に再開してからの良いリズム

 異例尽くしの朝ドラだった。本来なら東京五輪が放送の途中で始まり、64年大会の入場行進曲をつくった古関と重なるはずだった。が、コロナで御破算。それどころか6月に放送が止まり、3ヶ月近い「再放送」を経て9月に再開、トータル5ヶ月余と短縮放送になった。

 しかもコロナ以前の2019年11月、書き始めたはずのベテラン脚本家が降板するという発表があった。「制作上の都合」で番組スタッフを含む3人で執筆するとのことだったが、素人ながら大変そうで、これが波乱の出発点だったとさえ思う。

 前半の終了直後、「『エール』が心の穴を埋めてくれなかった」と論座に書いた。

 言及しなかったが、脚本家のゴタゴタが影響してそうだと思ったりもしていた。だけど、何ということでしょう、9月に再開した「エール」、調子が良くなっていた。

 再開第1週の「弟子がやって来た!」が、好きなタイプだった。詳しくは拙著『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』を読んでいただくとして、簡単にまとめるなら「主人公が何者かになろうとしている」朝ドラが大好きなのだ。

 そもそも裕一と音を演じる窪田と二階堂は、幅広い役を演じる実力派だ。なのに、前半はどうもギクシャクしていた。だが再開してからの二人には良いリズムができていて、ドラマの空気も弾むように変わっていた。そう、歌もドラマもリズム感は大切だ。

 弟子役の岡部大と、音の妹役の森七菜の恋愛がとてもよかった。二人の「何者かになりたい」感がうれしかった。お笑い芸人の岡部は、無名の9番打者と思っていたら案外打つじゃん的な良さ。森はこの秋から民放では主役を務めているが、それにふさわしく3球3振の投球だよ的な芝居。二人の懸命さに、何度かウルっとさせられた。

古山裕一(窪田正孝)=NHK「エール」の公式サイトより拡大森七菜(音の妹・梅)と岡部大(弟子・田ノ上五郎)=NHK「エール」の公式サイトより

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筆者

矢部万紀子

矢部万紀子(やべ・まきこ) コラムニスト

1961年生まれ。83年、朝日新聞社に入社。宇都宮支局、学芸部を経て、週刊誌「アエラ」の創刊メンバーに。その後、経済部、「週刊朝日」などで記者をし、「週刊朝日」副編集長、「アエラ」編集長代理、書籍編集部長などをつとめる。「週刊朝日」時代に担当したコラムが松本人志著『遺書』『松本』となり、ミリオンセラーになる。2011年4月、いきいき株式会社(現「株式会社ハルメク」)に入社、同年6月から2017年7月まで、50代からの女性のための月刊生活情報誌「いきいき」(現「ハルメク」)編集長をつとめた後、退社、フリーランスに。著書に『美智子さまという奇跡』(幻冬舎新書)、『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』(ちくま新書)。最新刊に『雅子さまの笑顔――生きづらさを超えて』(幻冬舎新書)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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