タイ洞窟に閉じ込められた少年たちが笑顔だった訳
2018年7月、世界中に流れたニュースであるので、覚えている人もいるだろう。タイのサッカーチームの少年12名(11~16歳)とコーチ(25歳)が横長の洞窟の入り口から約5キロのところまで行ったときに水位が急に上がってきて、そのまま出られなくなった事件である。救出されたのは、洞窟に入った日から数えて18日目のこと。2週間以上も真っ暗な中に閉じ込められていたのである。

洞窟内で救助隊のダイバーに笑顔を見せる少年=2018年7月3日、タイ海軍提供
彼らが救出されたときに映し出された映像を見て、「あれ? あんなににこやかにしていられるのはなぜだろう」と思った人もいるのではないだろうか。想像してみてほしい。自分が光も何もない狭い洞窟の中で、迫りくる水を目の前に見ながらいつ助かるともわからない全く行き先不透明な状況で、平静さを保っていられるだろうか。病院のMRI検査ですら「狭い空間を想像するだけで」恐怖でいっぱいになり一度は予約を直前にキャンセルしてしまった私は、考えるだけで自分があの状況に置かれたらと考えるだけで身の毛がよだつ思いである。
18日もの間、彼らはどうやって気持ちを平静に保っていられたのだろうか? 日本では救出劇ばかりがクローズアップされ、この疑問の答えは得られなかったが、その謎をタイ在住の仏教研究者の浦崎雅代氏から教えてもらい、「やっぱり」と思った。
彼らを支えたものこそ、
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