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東浩紀『ゲンロン戦記』をつくりながら考えたネットメディアと私の戦い

ネットに夢を抱いた哲学者が立ち上げた「ゲンロン」の戦績と失敗の遍歴と重ね合わせて

石戸諭  ノンフィクションライター

拡大『ゲンロン戦記 「知の観客」をつくる』(中公新書ラクレ)
 『ゲンロン戦記 「知の観客」をつくる』(中公新書ラクレ)という本で、東浩紀さんの聞き手と構成を務めた。本書の概要は、公式ホームページにうまくまとまっている。

 《難解な哲学を明快に論じ、ネット社会の未来を夢見た時代の寵児は、2010年、新たな知的空間の構築を目指して「ゲンロン」を立ち上げ、戦端を開く。ゲンロンカフェ開業、思想誌『ゲンロン』刊行、動画配信プラットフォーム開設……いっけん華々しい戦績の裏にあったのは、仲間の離反、資金のショート、組織の腐敗、計画の頓挫など、予期せぬ失敗の連続だった。10年の遍歴をへて哲学者が到達した「生き延び」の論理》

 5回にわたるインタビューを読み返し、そして構成するなかで、私もまた2010年代にインターネットメディアに夢を抱き、あるときから別の戦い方を模索するようになったことを思い出していた。

新聞にはできない新しいメディアを作る!

 毎日新聞で10年ほど記者として経験を積み、2016年に新興のインターネットメディア「BuzzFeed Japan」(以下、バズフィード)に移籍したばかりの私は、新聞ではできない新しいメディアを作り上げるのだと息巻いていた。

 20代でインターネットの可能性に惹かれた。SNSも業界や社内ではかなり早い時期から使っていた。記事を書いて終わりではなく、書いた後の拡散や双方向でのやり取りから続報を続けることにもこだわっていた。

 こだわりといえば、今から10数年前に「エビデンスに基づくニュース」が必要だと方々で語り、データや科学的な根拠にベースにしたコメントを取り入れた報道にも力を入れていた時期がある。

 とにかく科学的に正しいものを報じ、正しくないものはたとえ社内の同僚であっても批判的な態度をとっていた。エビデンスに基づくファクトでもって問題のありかを知り、識者と連携し、合理的な解決策まで提示できれば、社会は動くと無邪気に信じていたのだ。

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筆者

石戸諭

石戸諭 (いしど・さとる) ノンフィクションライター

1984年、東京都生まれ。記者、ノンフィクションライター。2006年に立命館大学法学部卒業後、毎日新聞社に入社。岡山支局、大阪社会部、デジタル報道センターを経て、2016年にBuzzFeed Japanに入社。2018年からフリーランスに。2019年、ニューズウィーク日本版の特集「百田尚樹現象」で第26回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞作品賞を受賞。著書に『ルポ百田尚樹現象:愛国ポピュリズムの現在地』(小学館)など。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです