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三浦春馬という才能を大事にしない国――主演作『天外者』公開に寄せて

「イケメン」の押し付けは必要なかった

林瑞絵 フリーライター、映画ジャーナリスト

最後の主演映画『天外者』が公開

 12月11日から三浦春馬、最後の主演映画『天外者』(てんがらもん)が全国公開となる。多彩な才能と表情を持つ俳優・三浦の素晴らしさが広く再認識される好機となるだろう。

 監督は『利休にたずねよ』(2013)の田中光敏監督。三浦は幕末から明治初期にかけ活躍した実在の人物、五代友厚に扮する。幕末藩士から役人、実業家へと転身を重ねながら、同志とともに新しい日本を夢みた時代の改革者だ。三浦が魂を吹き込む五代の生き様は、混乱期にある現在の日本にも示唆を与えてくれるだろう。

『天外者』(てんがらもん) 2020年12月11日(金)より、東京・TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー Ⓒ2020 「五代友厚」製作委員会 配給/ギグリーボックス
拡大『天外者』(てんがらもん) 2020年12月11日(金)より、東京・TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー Ⓒ2020 「五代友厚」製作委員会 配給/ギグリーボックス

 明治維新前後、列強国は市場獲得の矛先を日本に向けた。仏商人は電信設置、米商人は鉄道設置の願いを出すも、五代が外資の参入を阻止している。翻って現在の日本は新自由主義の名の下に、議論の深まりもないまま、国益を失いかねない法律(改正種苗法ほか)が次々成立したり、RCEP(地域的包括的経済連携)に署名したりしている。コロナ騒ぎは目くらましにもなっている。その危うさに気がついている国民はどれほどいるだろう。本作は様々な見方ができるとは思うが、ぜひ「春馬さん、かっこいい」だけではなく、この映画をいま見る意義も積極的に読み取ってほしい。

 さて、筆者は三浦の逝去報道があった夏以降、彼の姿を追いかけてきた。にわか追っかけで恐縮であるが、最初の発見は、彼が想像以上に多様な顔を持つ俳優だったことだ。

 わかりやすい例が、年上女性を虜にするBMXライダー役の『ラスト♡シンデレラ』(2013)と、筋萎縮性側索硬化症(ALS)で車イス生活の患者となる『僕のいた時間』(2014)。この2本のドラマの放送期間は半年しか違わないが、顔も佇まいもあまりに違う。彼がテレビの番宣に出る時は、それぞれの役の青年、広斗と拓人がひょっこり抜け出てきたように存在していた。

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筆者

林瑞絵

林瑞絵(はやし・みずえ) フリーライター、映画ジャーナリスト

フリーライター、映画ジャーナリスト。1972年、札幌市生まれ。大学卒業後、映画宣伝業を経て渡仏。現在はパリに在住し、映画、子育て、旅行、フランスの文化・社会一般について執筆する。著書に『フランス映画どこへ行く――ヌーヴェル・ヴァーグから遠く離れて』(花伝社/「キネマ旬報映画本大賞2011」で第7位)、『パリの子育て・親育て』(花伝社)がある。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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